シェルターの人口カバー率は日本の17倍、中でスポーツも ロシアと国境接するフィンランド
ロシアによるウクライナ侵略など国際情勢が悪化する中、有事における国民保護は喫緊の課題だ。日本は北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍拡に直面するが、シェルターの人口カバー率は約5%(地下施設のみ)にとどまる。一方、ロシアと約1300キロの国境線で接するフィンランドでは、人口の8割超をカバーするシェルターを整備し、外部からの武力攻撃に備えている。フィンランドのシェルターを訪ねた。 【写真7枚】家庭用核シェルター、日本にも普及するか 地下に広がる空間に入ってみると… ■地下約30メートル 首都ヘルシンキの中心地・ヘルシンキ中央駅から1キロほど離れた一角に小屋がぽつんとたたずんでいる。中にはエレベーターの出入り口と階段しかない。そのエレベーターで地下約30メートルへと降りると、強固な基盤岩をくり抜いた地下空間が広がる。 スポーツ用のコートが4面ある他、コーヒースタンドや子供向けの遊び場も併設されている。地上は冬の寒さだが、地下空間は快適な気温に保たれており、10人ほどの若者たちがインドアホッケーに興じていた。 ただ、この施設は市民の憩いの場にとどまらない。「メリハカ市民防衛シェルター」という名前を持ち、有事には約6000人を収容するシェルターとして活用される。 核兵器や毒ガスといったあらゆる攻撃を想定し、厚さ約40センチの金属製の扉、衝撃を到達させないための余剰空間、汚染された空気を浄化するフィルターなど、さまざまな防御用の構造が組み込まれている。避難者のための組み立て式ベッドやトイレを備え、甲状腺被曝を防ぐヨウ素剤も備蓄している。 フィンランドは1939年にソ連(現ロシア)の侵攻を受けた歴史があり、耕地面積の10%を奪われながらも独立を維持した。以降もソ連に脅かされながら国民を守る備えを続けてきた。 シェルターを管轄するヘルシンキ市救助局安全対策コミュニケーション部のアンナ・レヘティランタ部長は「施設を日常的に使用することで、市民は避難シェルターの場所が頭に入っている」と説明する。 脅威にさらされ進化