シェルターの人口カバー率は日本の17倍、中でスポーツも ロシアと国境接するフィンランド
フィンランドではシェルターは珍しい施設ではない。法律で床面積が1200平方メートル以上の建築物にはシェルター設置が義務付けられている。
国内に約5万500カ所整備されており、収容人数は人口約550万人の約85%をカバーする。ヘルシンキ市内には約5500カ所あり、人口約67万人を上回る90万人の収容が可能だ。観光客らも避難できる。
第一次世界大戦中には、毒ガスを念頭にシェルターを初めて設置。第二次世界大戦では新たに空爆という脅威が加わった。軍事技術の進化に合わせるためにシェルターに求められる防御能力の基準は5~10年おきに見直されている。
「フィンランドは常に市民を保護する態勢を作ってきた。シェルター整備は国民保護のみならず、社会機能を維持していくためのものだ」
レヘティランタ部長は意義をこう強調する。
大半が地上の施設
昨年12月10日、フィンランドのオルポ首相を首相官邸に迎えた石破茂首相は、フィンランドのシェルター整備について取り上げた。同席者は「首相はどのようにすればフィンランドのようにシェルターを普及できるのか、ヒントを得たいと考えていた様子だった」と語る。
日本のシェルターの整備状況は大きく遅れている。昨年4月時点で、ミサイルの爆風などから身を守る「緊急一時避難施設」に指定されたコンクリート造りの建物などは全国で約5万9000カ所ある。だが、その大半は、地上の学校校舎や公共施設であり、地下施設は3926カ所にとどまる。地下施設に収容できる人数は、人口のわずか4・7%だ。
台湾有事が現実味を帯びる中、中国に近い先島諸島でさえシェルター整備は思うように進んでいない。日本でも早期の整備が求められる。(深津響)