大麻「の使用罪」新設が、じつは「国際的な潮流」に逆行していると批判を受けているわけ
改正大麻取締法の施行
2024年12月12日、従来の「大麻取締法」が「大麻草の栽培の規制に関する法律」に改正され、併せて関連法規である「麻薬及び向精神薬取締法」等の一部が改正された。 【マンガ】19歳理系大学生が「フィールドワーク中」に死にかけた「ヤバすぎる体験」 これには、従来の大麻の取り扱いや罰則を大きく転換する内容が含まれている。 旧大麻取締法では、部位規制といって大麻草の部位によって規制対象かそうでないかが定められていた。すなわち、大麻草の種子や成熟した茎は規制対象ではなく、それ以外の部位(花穂、葉、未成熟の茎、樹脂、根)が規制されていた。 しかし、これを改めて成分規制となり、大麻草に含まれるさまざまな物質のうち、主にテトラヒドロカンナビノール(THC)とその塩類等が規制成分となり、「麻薬及び向精神薬取締法」にリストアップされた。 一方、別の主要成分であるカンナビジオール(CBD)は規制されないこととなった。 さらに、医療用で大麻製剤を施用することが認められるとともに、嗜好目的で大麻を使用した場合の「使用罪」が新設されることとなった。
医療目的での大麻使用
最も注目すべき変化は、医療目的での大麻の使用が認められたことであろう。 現在、CBD製剤として、国内で難治性てんかんなどに使用される「エピデオレックス」という医薬品の治験が進行中であり、薬事承認されれば国内で活用することが可能となる。 こうした一連の改正は、そもそもの源流をたどると国連の「麻薬単一条約」の改正にある。 同条約は、大麻、あへん、コカイン等の薬物を規制するものであるが、このなかで、あへん(モルヒネなどを含む)やコカインは、「乱用のおそれがあり、悪影響を及ぼす物質」であるカテゴリーIに分類されている。 一方大麻は「Iのなかでも特に危険で、医療用の有用性がない物質」であるカテゴリーIVに分類されていた。 それが、WHOの専門家会合などを経て、2020年の国連麻薬委員会において、大麻をカテゴリーIVからIに移すことが可決されたのである。 つまり、これまでは大麻は医療目的でも何の有用性もない危険なだけの麻薬と考えられていたものが、医療用の有用性が認められたということである。 とはいえ、依然としてあへんやコカインなどと同様の危険性があるカテゴリーIであることには注意が必要であり、その危険性の評価が緩和されたわけではない(図1)。 事実、WHOなどでは、大麻の害を急性の害と長期的な害にわけて、表1のように注意喚起している。 このように、条約上での大麻の位置づけが変わったことから、それに従って国内法を整備する必要性が生じ、今回の大麻取締法の改正に至ったというわけである。 とはいえ、「医療大麻解禁だ」などと早合点し、勝手に大麻を「医療目的」と称して自己使用してよいわけではない。 さらに、国際的には大麻の合法化が進んでいるとの誤解が広まっているが、先述のように国連条約では大麻は依然として規制薬物であり、嗜好目的で使用することは禁じられている。 嗜好目的での大麻使用が国内法で認められている国もたしかにあるが、それはこの条約の締約国が現時点で186か国であるのに対し、わずか数か国でのことであり、明確な条約違反である。