交流戦史上最高打率、日本ハム水谷瞬がプロ1号に込めた恩人への感謝
6月18日に全日程が終了したプロ野球のセ・パ交流戦。今季の「交流戦首位打者」に輝いたのは、プロ入りから昨年までの5年間で1軍出場がなかった日本ハムの水谷瞬外野手だ。ソフトバンクから現役ドラフトを経て移籍してきた23歳は、4月9日に初めて1軍に登録され、5月21日に再昇格すると潜在能力が開花。交流戦では64打数28安打、打率4割3分8厘と猛打を振るい、2015年の秋山翔吾外野手(当時西武、現広島)の4割3分2厘を超える歴代最高打率をマークした。主に3番に座り、15試合連続安打も記録。勝負どころでの一打が光った。 193センチ、99キロの堂々たる体格から快打を連発する。「毎日が自分との闘い。(昨季まで)悔しい5年間だった。それがあったからこうやって結果が出ているし、その5年間に感謝しながら野球をやっている」。殻を破った今だからこそ、苦しかった過去を前向きに振り返ることができる。(時事通信札幌支社編集部 嶋岡蒼) 【写真】ソフトバンクの新入団選手発表に臨んだ水谷瞬=2018年12月 ◆現役ドラフトでソフトバンクから移籍 愛知県出身で、高校は島根県の石見智翠館へ。ドラフト5位で2019年にソフトバンクに入団した。23年から12球団で唯一の4軍制を導入しているソフトバンク。分厚い選手層の中に埋もれてしまう選手も少なくない中、水谷も例外ではなかった。 自らがチャンスを生かし切れなかったとの思いも持ちつつ、「結果を出しても上げてもらえない状況で、どうしても自信がなくなるようなメンタルに追い込まれることもあった」。2軍や3軍の試合とはいえ、結果を出し続けるのは簡単ではない。3軍でプレーすることもあったが、腐らずに出番を待ち続け、本人の中には「確実に成長しているという実感」もあった。 転機が訪れたのは昨年12月。現役ドラフトで、若手を積極的に起用する新庄剛監督が率いる日本ハムへ移籍することに。「一からの出直し」との気持ちを携え、新たなスタートを切った。 ◆佐藤2軍コーチと二人三脚 春季キャンプは2軍スタートながら、試合で結果を出して1軍にも呼ばれた。開幕は2軍で過ごし、4月に初めて1軍に上がって11日に初出場、初スタメンで初安打を放ち初打点も。22日に出場選手登録を抹消されたが、イースタン・リーグで計8本塁打を放つなど結果を残し、5月21日に再び1軍へ。そこから快音を響かせた。 要因の一つが、日本ハムの佐藤友亮2軍打撃コーチの存在だ。特に力になっているのが、対戦する投手に合わせた打席でのアプローチ。相手投手の持ち球や特徴から、カウントによって打席でどう立ち回るか。二人三脚で取り組んできた。 ◆「友亮さんなら何を言うか」 2軍の試合では、打席前のネクストバッターズサークルで、水谷自身が考えるアプローチを佐藤コーチに伝えてから打席に向かった。同コーチは先に答えを伝えず、水谷本人が考えたやり方をまずは実践。その打席の後、結果にかかわらず2人で内容を細かく分析した。 1軍で出場が続いても、佐藤コーチとはLINEでのやりとりを続けている。打席では「友亮さんなら何を言うか考えろ」と自問自答。「1軍は皆が良い投手。この投手だったらどう攻めるかを考えて、打席に入っている」。打撃技術の向上は、佐藤コーチと磨いてきた打席での駆け引きが支えとなっている。