ガルウイング+ミッドシップ「オートザムAZ-1」は軽のスーパーカー!149.8万円でデビュー【今日は何の日?9月24日】
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、マツダの2シーター軽スポーツ「オートザムAZ-1」が誕生した日だ。FRP製ボディパネル、ガルウイングドア、ミッドシップレイアウトと、1980年代後半のバブル景気が作り出した異色の軽スポーツである。 TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・AZ-1のすべて ■バブル時に登場した軽2シーター・ミッドシップスポーツAZ-1 AZ-1の詳しい記事を見る 1992(平成4)年9月24日、マツダから軽の2シータースポーツ「オートザムAZ-1」が発表(発売は10月5日)された。バブル景気を背景に、オートザムAZ-1は軽初のガルウイングを装備したミッドシップ(MR)レイアウトという、まるで軽のスーパーカーと、大きな注目を集めた。 バブルが生んだ軽2シータースポーツ“ABCトリオ” 1980年代後半、バブル景気を背景に軽自動車も高性能、高機能のクルマが続々と登場。その勢いに乗って1990年代初頭に3台の軽スポーツカー“ABCトリオ”がデビューした。ABCは、車名のイニシャルをとったものだ。 ・マツダ「オートザムAZ-1」(車両価格149.8万円:1992年~) ・ホンダ「ビート(Beat)」(車両価格138.8万円:1992年~) MR用プラットフォームとオープンモノコックボディを組み合わせた本格的なMRスポーツ、低重心の理想的な前後重量配分43:57を実現。NAながらレスポンスの良い高回転型エンジンを搭載したミッドシップスポーツ。 ・スズキ「カプチーノ(Cappuccino)」(車両価格145.8万円:1991年~) 典型的なロングノーズ・ショートデッキに、リアタイヤの直前に乗員を載せたFRスポーツカー。ボディの軽量化にこだわり、ABCトリオの中では最も軽量な700kgを達成 ちなみに1992年の大卒の初任給は、18万円(現在は約23万円)程度なので、単純計算では現在の価値でAZ-1は191万円に相当する。 オートザムは、マツダが進めた5チャンネル体制の販売系列名 オートザムAZ-1のオートザムは、1989年にマツダが進めた5チャンネル体制で誕生した販売系列のひとつである。 1980年代後半クルマが飛ぶように売れたバブル好景気の勢いに乗り、トヨタや日産、ホンダと同じように、マツダは販売系列の多チャンネル化を進め、それまでの3チャンネルから5チャンネル体制に拡大した。 ・マツダ店:「ファミリア」などの小型車から商用車、高級車など幅広く販売 ・マツダオート店:「RX-7」や「MS-9」などのスポーツカーや高級車を販売 ・オートラマ店:フォードブランドの「レーザー」や「テルスター」などを販売 ・ユーノス店:スペシャルティカーを中心に、「ユーノスロースター」や「ユーノスコスモ」を販売 ・オートザム店:オートザムAZ-1など、主に軽自動車と小型車を販売 しかし、規模の大きくないマツダにとっては、5つの販売チャンネルを維持するための車種展開の負担は大きく、目論見に反して販売は伸びずにシェアは低下。結局、マツダの5チャンネル化は失敗に終わった。 FRPボディ、ガルウイング、MRを採用したスーパーカー並みのAZ-1 オートザムAZ-1は、モノコックフレームをFRP製ボディパネルで覆ったボディに、ガルウイングドアを装備。AZ-1のガルウイングは、ルーフ中央部を通るフレームにヒンジを付け、サイドウインドウとドアとも上方に開くランボルギーニ、・カウンタックと同じ手法だ。ガルウングの装備は、軽としては最初で最後である(2024年9月現在)。 パワートレインは、スズキから調達したアルトワークスの当時最強を誇った最高出力64psを発揮する660cc 直3 DOHCターボエンジンと5MTの組み合わせ。駆動方式は、エンジンを運転席直後に横置きに搭載したMRレイアウトで、前後重量配分44:56を実現した。ただし、剛性を高めるためにセンターメンバーとサイドメンバーが太く設計されたので、室内スペースは2人乗りでギリギリの状態で、居住性は十分とは言えなかった。 画期的な装備で多くの若者から注目を集めたが、販売は期待通りには伸びず、わずか2年で生産を終えてしまった。 ・・・・・・・・ オートザムAZ-1の生産台数は4409台、ビートとカプチーノも結局販売台数を伸ばすことなく、同時期に生産を終えた。今では考えられないユニークで遊び心満載の軽スポーツだったが、開発はバブル全盛期、発売した時にはバブル崩壊が始まったということで、タイミングが悪かったのだ。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純