「59」のスコアカードはいずこへ? 22歳・下家秀琉“末っ子”の悲哀と覚醒
◇国内男子◇ANAオープン 事前情報(11日)◇札幌GC 輪厚C(北海道)◇7066yd(パー72) 【画像】最多アンダーパー記録を更新! 18ホール50台の“マジックナンバー”は、「なんか、気づいたら」マークしていた。前週の下部ABEMAツアー「PGM Challenge」の最終日、22歳の下家秀琉(しもけ・すぐる)は4位から1イーグル9バーディの猛チャージで「59」。同ツアーの史上最少ストロークに並んだだけでなく、54ホールの最多アンダーパー、最少ストローク記録を更新した。 大阪学院大4年時の昨年にプロ宣言したルーキー。身長180㎝、体重85㎏の魅力的な体格の長距離砲は今季、思うような好成績が出ずに苦しんでいた。「もう結構、後がない状況で。『今週しかないぞ!』と」意気込んで臨んだ試合で、得意のショットが次々とピンの近くへ。パッティングもかみ合い、9つのバーディはほぼ3m以内を沈めたものだった。 これまでのベストスコアは6月のレギュラーツアー「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP」2日目にマークした「62」。その前はアマチュア時代にツアーの月曜予選会で記録した「63」だった。どうやら本番に強いタイプ。今回も会心に違いないが、「59」のスコアカードは記念にもらうこともなく、自分用のメモも「どこかに放った(捨てた)かも…」と執着しなかった。 珍しい「下家」の苗字は、父・民夫さんの故郷・徳島県の「すごい山奥」の集落に数人いるそうだ。「山の上の方に住んでいる方は上家さん、下の方は下家らしくて」。初見ではなかなか“シモケ”と読んでもらえない。ゴルフ場で「シモイエさん」と呼ばれ、訂正することなく、そのままうなずいたのは、つい数日前のことだ。 大阪府出身で、同じくツアープロでの活躍を目指す2人の兄を持つ。長兄の秀翔(ひでと)は4つ年上、次兄の秀平(しゅうへい)は2つ上。末っ子は幼い頃、こちらも「なんか、気づいたら」ゴルフに真剣に取り組んでいた。長い間、クラブはずっと兄のおさがり。小中学生にはあまりにハードスペックだったことにも気づかなかった。 初めての“自分用”を手に入れたのは高校3年生の時。「練習場のマットで打っていたら、兄にもらった7番アイアンが折れたんです」。意を決して、両親にクラブをねだった。打ちやすいと思ったモデルを自ら選ぶと「ゴルフはクラブでこんなに変わるんや…。そら(良い)成績は出えへんわ…」と驚いた。 「それから僕、めっちゃクラブ好きになって」と勉強を始めた。プロ初優勝を呼び込んだアイアンは、大学進学前からお世話になり始めたタイトリストのT100の2019年モデル。長年愛用していたセットを当週に入れ替えたことも、最高の結果につながった。 下部ツアーでの賞金ランク浮上(5位)により、来季のレギュラーツアーの限定的な出場権を確保した。今週、そして次週の「パナソニックオープン」への出場も決まり、より高いステージの試合に集中できそう。次の「なんか、気づいたら…」はいつ来るだろう。(北海道北広島市/桂川洋一)