WBC米国の監督は「菅野はメジャーリーグの投手だ」と最大級賛辞
米国から見ても2-1の薄氷勝利だった。 オールスターメンバーをラインナップに並べながらも侍ジャパンの先発菅野の前に6回をわずか2安打。4回に奪った先取点も、イエリッチのセカンド正面をついたゴロを菊池が弾いてしまったのがきっかけで、力で崩したとはいえなかった。二死一、二塁から、この試合、唯一のタイムリーをレフト前へ放ったマカチェンも、試合後は「日本の投手についてはあまりよく知らなかった。米国にとっては歴史的な勝利で、その一員となれて良かった」と答えたが、菅野のピッチングには度肝を抜かれたようだった。 4番のナ・リーグの2年連続2冠王、ロッキーズのアレナドは、3打席連続三振。それも最後は、すべて148キロのストレートで仕留められる力負け。前日会見では、「菅野という投手のことは正直よく知らない」と、コメントしていたリーランド監督は、この日は一転、「菅野はビッグリーグ(メジャーリーグ)のピッチャーだ」と、最大限の賛辞を送った。 最速151キロのストレートに、カット、スライダー、シュートを精密にミックスされ、攻略の糸口を最後の最後までつかむことができなかったのである。 「今夜の日本のピッチングはよかった。しかし、自分たちのピッチングがそれを少し上回ったのだ」 リーランド監督は、石橋を叩いて渡るような継投策をとった。 先発のロアークは、その立ち上がりに山田に死球を与えて一死二塁のピンチを背負ったが青木を詰まらせ、筒香に対しても150キロのボールを動かして左飛。4回を2安打無失点にまとめて、まだ48球しか投げていなかったが、リーランド監督は、5回からホワイソックスのセットアッパーで、昨季はリーグ最多の28ホールドをマークしたネイト・ジョーンズに交代した。 「今日のコンディション(雨)は、ときにはつらいものだった。日本はとても素晴らしいチームで、アウトを取るのが難しいチームだった。こんなエキサイトな試合は初めてだった」がロアークのコメント。 だが、6回一死から菊池にライトフェンスギリギリに飛び込む同点ソロを打たれると、青木、筒香と、左打者が並ぶところで、すぐにインディアンズの左腕ストッパー、ミラーに代えた。 7回はレンジャースで昨季38セーブを挙げたダイソンを挟み、日本の守備の乱れから1点のリードを奪った8回には追加召集したメランソン。昨季47セーブをマークした右腕だが、代打・内川にライト前ヒットを許して、一死二塁から青木を四球で歩かせると、筒香を迎えた打席で、迷わず変則右腕のニシェクを投入した。 筒香は、見たこともないスタイルのピッチャーにタイミングが合わずライトフライに終わっている。そして9回は満を持して7人目のグレガーソン。今大会はリーランド監督が9回を任せているスライダーをウイニングショットにするアストロズのセットアッパーである。 グレガーソンは期待に応え、最後のバッター松田を曲がりの激しいスライダーで三振させると、右手で小さくガッツポーズを作った。 菅野、千賀、平野、宮西、秋吉というリレーの前に12奪三振を喫した米国チームにしてみても、投手陣の踏ん張りと、名将リーランド監督の機を見た継投策がはまらなければ、どっちに転んでもおかしくないようなゲームだった。