最年長の遠藤保仁 3大会越しの思い
ザッケローニ監督のもと4年間積み上げてきた方向性に手応えがなくなはない。そのプレースタイル同様に、淡々と言葉をつむぎながらも、根底にあるのは自らが、その中心となって築き上げてきたスタイルへの誇り。「コンフェデでは3連敗したけど、イタリアにもメキシコにも勝つチャンスはあった。実際に強豪と言われる国にも勝ってきたし、このスタイルを変える必要はない」。 遠藤がこだわるスタイルとは、4年前の南アフリカ大会のそれとは異なり、日本が主導権を握りながらアクションを起こす攻撃的なサッカーである。同僚の今野泰幸も「今の日本には中盤から前線に本当にいい選手が揃っている」と同調するが、そんなタレントたちを操るのが希代のプレーメーカー、遠藤だ。「日本の特長は昔から攻撃面にあると思っている。守備に重点を置く試合はほとんどしてきていないので、攻めて勝つのが一番だと思う」。 話は、やや脱線するが、日本人選手の熱闘が注目を集めていた今年2月のソチ五輪の最中、遠藤は、自らが興味ある冬季五輪の競技についてこんな感想を話したことがあった。「カーリングは面白い。相手があっての上で戦略を立てる競技だから」。何気ない縦パス一本で局面を変えたり、メッセージ性のあるキックでチームを動かしたりする希代のパサーならではのスポーツ観である。 遠藤の頭の中には、カーリング同様、コートジボワール、ギリシャ、コロンビアのフォーメーションや特徴を叩き込んだ上で、どうグループリーグを戦うかの戦略のイメージが固まりつつある。前線にひしめく数々の海外組を活かすのはブラジルへの憧憬の思いを胸にJリーグで自らを磨き上げてきた背番号7。ただ、ワールドカップで勝つことの難しさを過去2大会、肌で体感してきた遠藤は日本の道のりの険しさも同時に承知している。 「3試合とも簡単な試合にはならないし、日本にとって全てを出し切らないといい結果は生まれない」。プレーメーカーとして、そして日本で最も場数を踏んだ百戦錬磨のチーム最年長として……。遠藤保仁はキャリアの集大成をサッカー王国の民の前で披露する。 (文責・下薗昌記/スポーツライター)