ポジティブ思考にもネガティブ感情にも振り回されない、佐久間宣行の新時代の「ごきげん」とは?
いろいろなものをインプットして、何事に対しても常に自分の意見を持つ
――メンタルヘルスの重要性がこの本のテーマの一つでもあると思うのですが、中年クライシスという言葉があるように、中年期は心身が不調に陥りやすかったりします。そうならないために、佐久間さんが心掛けていること何ですか? 僕自身、40歳を超えたときに、苦手なものは一生苦手なままだし、案外克服できないものだなとわかったので「いい諦め」をしていくということでしょうか。 「(自分の)この苦手分野はもう諦めて、別の方向で注力しよう」とか、徐々にいい諦めをしていくと、いい老後の準備になるなと思っています。得意じゃないところを伸ばしていくのは効率が悪いじゃないですか。 もちろん最低限人に迷惑が掛からないようにはするけれども、それよりも自分の長所になるかもと思う部分を伸ばしていったほうがいいですよね。 ――自分がもう一人欲しいなと思うことはありますか? あぁ。確かに助かることも多いと思います。でも、自分と違う人間と掛け合わせてしかできないもののほうが面白いだろうなと思うんですよね。 自分の価値観と似ているような人を集めると、単なる再生産になっていくということに30代ぐらいで気付いて。そうなると、同じジャンルでの成功体験だけを追い掛ける仕事になっていく気がしたんです。 YouTubeの「佐久間宣行のNOBROCK TV」はIT企業のチームと組んでいるんですけど、それもこの考えがベースにあります。テレビと全く同じやり方を踏襲してコンテンツを作っていたら、3年でこういう変わった立ち位置で仕事はできなかったんじゃないかと思います。 ――一度成功したら、同じモデルで再生産し続けたほうがラクとは思わないんですか? あまり思わないですかね。むしろ、つくるものに当たり外れがあるなと思われていたほうが健全だなって気がするんです。「当たり回ばかりだな」と言われると、一定の層の人にしか受け入れてもらえていないようで、ちょっとヤバいかな、と考えるほうなんです。 なので、評判のいい仕事ばかり選ばないようにしたり、偶然の巡り合わせも大事にしたりもしています。 ――常に刺激が必要だってことですね。 そうですね。刺激とかリスクがあったほうが、見たことのないものが生まれるし、そうやって生まれたものが自分を知らない場所に連れていってくれると思っています。 ――価値観や意識のアップデートという部分はいかがですか? アップデートできない中高年がさまざまな場面で地雷を踏んだりする事案はよく耳にします。 僕の場合ですが、アップデートのコツは、常にいろいろなものをインプットし続けることですね。昔から好きなものだけ、とか、得意だったものだけの世界にいると、地雷を踏むことが多い気がします。 今のものを見続けたり調べ続けたりすることって正直面倒くさかったりします。でも、それをやっている自分が5年後の自分を助けているイメージが僕にはあるので、やり続けなきゃいけないなと思います。 あと、別に発表はしなくていいんですけど、世の中で起きている事柄に対して自分の意見を持つというクセは付けておいたほうがいいかな、と思っています。 選挙も投票し続けておかないと、自分の意見がマジョリティかどうか分からないじゃないですか。白票でいいやと思ってそれを繰り返していると、自分の意見がマジョリティかマイノリティかも分からなくなります。いろいろなものを絶えずインプットして、何事に対しても常に自分の意見を持つようにする。それを地道に続けることが価値観や意識のアップデートにもつながっていくんだと思います。
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