ブルーズの21年ぶりか。チーフスの11年ぶりか。スーパーラグビー・パシフィック決勝まもなくキックオフ
2024年度のスーパーラグビー・パシフィックもいよいよグランドファイナルを迎える。6月22日(KO現地時間/19時5分)ラグビーの聖地イーデンパーク(オークランド)でおこなわれる決勝のカードは、ブルーズ×チーフスのNZダービーとなった。 今週に入りNZのスポーツニュースで話題をほぼ独占するほど注目度は高く、チケットは即日完売となった。 準決勝を振り返りつつ、決勝の展望をしてみたい。 <準決勝2試合(6月14、15日)の結果> ■ブルーズ34-20ブランビーズ サム・ダリーをはじめとするブルースの若いLO陣が奮闘した。LOパトリック・トゥイプロトゥ主将が欠場した不安を吹き飛ばし、FW戦で圧倒。最後までブランビーズに追い上げを許さず、見事な勝利で決勝行きを決めた。 ■ハリケーンズ19-30チーフス チーフスは、不運にも映るTMOの判定で2枚のイエローカードを受けながらも、数的不利をものともせず最後まで試合をコントロールした。攻撃面ではNO8ウォレス・シティティが随所にトライに関わるパフォーマンスを見せ、チーフスを勝利に導いた。 結果的にチーフスの序盤の2連続トライが試合に大きく影響し、レギュラーシーズン1位のハリケーンズを撃破した。 <決勝プレビュー> レギュラーシーズン2位で通過したブルーズがホームに同4位のチーフスを迎える。両軍が決勝で対戦するのは今回が初めてになる。 3週間前の6月1日のレギュラーシーズンでの対戦はイーデンパークでおこなわれ、ブルーズが31-17で勝利 。過去5試合の対戦はブルーズが4勝1敗と優勢だ。 ◆ブルーズはキャプテンが奇跡の回復で決勝のメンバー入り 6月8日の準々決勝でヒザを負傷したキャプテンLOパトリック・トゥイプロトゥ。当初の診断は、全治6、7週間だった。ところが6月19日(水曜日)のメンバー発表には、トゥイプロトゥの名前があった。背番号4で先発出場。誰もが決勝には間に合わないと思っていただけに、NZ国内のラジオ、TVのスポーツニュースは、ブルーズのキャプテンの奇跡の復帰でざわついた。 ざわつくメディアに対して、ヴァーン・コッターHCは、「パティ(トゥイプロトゥ)は、根っからのブルーズマンで、グランドファイナルでプレーすることを強く望んでいた」と語った。この状況は、昨年同じように強行出場をしたクルセイダーズのLOサム・ホワイトロックを思い出させる。今年もミラクルはあるのか。 準決勝でトゥイプロトゥの代役を任されたジョシュ・ビーアは、ベンチスタート。トゥイプロトゥ同様、ケガから復帰のCTBブライス・ヒームが決勝に間に合いベンチ入りをしている。 ベンチも入れてオールブラックスが11人の豪華なメンバーとなっている。 ◆チーフスは、タウケイアホ欠場もスティーヴンソンはメンバー入り。 一方のチーフスのメンバーは、ケガ人の影響で、準決勝から先発メンバーに2人の変更がある。 前戦でアキレス腱を痛めたHOサミソニ・タウケイアホは決勝は欠場となり、メディアを騒がせた。タウケイアホの代役は、タイロン・トンプソン。決勝の大舞台で2番をつける。 昨年オールブラックスXVにも選ばれているトンプソンは、走力がありトライが取れるHOだ。今季はケガもあり出場機会が少なかった。決勝では、その鬱憤を晴らし大暴れするかも知れない。 先週HOの控えのブラッドリー・スレーターを決勝でもベンチ入りさせているものの、準決勝でヒザの負傷と脳震盪で途中退場している事から状態が気になる。出場できるかは、当日まで様子見のようだ。場合によってはトンプソンが80分間のフル出場になるかもしれない。 準決勝直前にハムストリングに違和感があり急遽欠場となったFBショーン・スティーブンソンは、無事に回復して15番をつける。先週スティーヴンソンの代わりに先発したのダニエル・ロナは、CTBとWTBのカバーでベンチスタートとなった。 LOマナアキ・セルビー‐リキットが、先週の試合で脳震盪を起こしたナイトア・アクオイに代わってベンチ入りしている。 新しく決勝のメンバーに入った二人に対してクレイトン ・マクミランHCは、「いまチャンスを手にしている選手たちに心から期待している。タイロン・トンプソンとマナアキ・セルビー・リキットという、チームに大いに貢献してくれる優秀な選手が2人いる」と語った。 ベンチを入れてオールブラックスが9人。ブルーズに引けを取らない顔ぶれになっている。 ◆<注目マッチアップ> プレーオフに入り一段ギアを上げた両チーム。注目マッチアップが沢山ある中で厳選して挙げてみたい。 ■ホスキンス・ソトゥトゥ×ウォレス・シティティのNO8対決 昨年オールブラックスだけでなくオールブラックスXVにも呼ばれなかったソトゥトゥの今季の巻き返しは半端ない。新人ながらも一気にブラックジャージに手が届きそなシティティ。きっとワクワクする対決になる! ハリー・プラマー×ダミアン・マッケンジーの10番対決 両者とも準決勝で抜群のゲームメイクを見せ勝利に貢献。決勝でも再現できるかがカギになる。両軍のバックスリーが危険なだけにキッキングゲームにも要注目。 ■リーコ―・イオアネ×アントン・レイナートブラウンの13番対決 イオアネの鋭いラン。強いディフェンスのレイナートブラウン。オールブラックスの13番を争う二人の対決は見逃せない。 上記の注目マッチアップを中心に激しいバトルが繰り広げられるだろう。決定力のあるWTB対決も大いに白熱しそうだ。 スクラム、ラインアウトのセットピースはもちろんの事、この試合での一番の見所はブレイクダウンになるだろう。FW第3列陣のマッチアップは想像がつかないほど白熱しそうだ。 この試合を最後にチームを去り日本行きを発表したアキラ・イオアネの仕事量が増えればブルーズに勝機がぐっと傾いてくるかもしれない。 対するチーフスは、ブルーズの豪華なFW陣が今季得意とするピック&ゴーに対応できるかがカギになってくる。対応できなければ、ブルーズ相手に勝利をすることは難しい。 逆に、準決勝のハリケーンズ戦のようにブレイクダウンで奮闘があればチーフスに勝機が見えてくるだろう。 どちらに勝利の女神が転がるのか全く想像がつかない決勝のチケットは、販売開始5時間足らずで完売。4万4000のチケットがあっと言う間に完売した理由はいくつかある。 まずは、NZダービーということだ。ご近所対決となったことも追い風となった。オークランド地区(ブルーズ)とワイカト地区 (チーフス )は、ボンベイ(Bombay)という町を挟んで隣町。モーターウェイ(高速道路)を使って車で約1時間半とあり、十分日帰りできる距離にある。 そして何といっても両軍の対抗意識が強く「バトル・オブ・ザ・ボンベイ」と名がつくほど注目度が高い。今回は決勝と、いつも以上に盛り上がる。即日完売にも納得がいく。 チーフスのサポーターは、愛用しているカウベルを鳴らしてホームのブルーズにプレッシャーをかけるだろう。サポーター同士が選手以上に戦う姿勢を見せることも、試合をより盛り上げてくれる要素になりそうだ。 ブルーズが勝てば、HOケヴィン・メアラム、SOカーロス・スペンサー、WTBダグ・ハウレット、ジョー・ロコゾコなどがいた2003年以来、21年ぶりのチャンピオンだ(2022年のトランスタズマンの優勝はカウントしていない)。 チーフスが勝てば、LOブロディ・レタリック、FL/NO8リアム・メッサム、SOアーロン・クルーデン、のちにアイルランド代表となるCTBバンディー・アキ(2シーズンチーフス)などが居た2013年以来、11年ぶりの頂点だ。 両軍とも優勝から長年遠ざかっているだけに、熱い決勝になりそうだ。 (文:松尾智規)