〈食べログ3.5以下のうまい店〉本当は秘密にしておきたい! 東新宿の穴場ビストロに食通が夜な夜な集まる理由
料理のハイセンスぶりに稲妻が走る!
柔和な表情とおだやかな口調。接客も調理をする姿も自然体で、料理を提供するテンポもじつにリズミカル。亀戸「梅田屋 本店」が経営母体の同店で料理の腕を振るう手塚佳典さんは新宿の調理師専門学校を卒業した後、ブーランジェリーや都内のフランス料理店でも働いた。どんなに手間をかけようと良い素材を使おうと、おいしい料理は作る人のセンスと腕にかかっている、というのは当たり前のようでいてそれを心の底から実感することは意外と少ない。ところが、手塚さんの料理は食材使いも盛りつけも一見、シンプルなようでいて、想像を軽々と超えた“驚旨“な味で食べ手の心をぐいぐいと惹きつけるのだ。
すべてのメニューを制覇したくなる! 小寺さんおすすめ料理とは?|ポテンシャルの高さを物語るアミューズに冒頭から心をつかまれる
初めて訪れるレストランの場合、アミューズは「名刺」的な役割を持つが、あまり仰々しすぎてもプレッシャーを感じるし、とは言えなんの変哲もないと気持ちがトーンダウンしてしまう。そういう意味では、塩味と甘みが絶妙な季節のムースは適解。さらに最中の皮にのせた玉ねぎ炒めを食べると、飾り気はないが丁寧に調理された一品からシェフの人柄が伝わってくるようだ。自家製のくるみパンはふかふかと香ばしく、胃袋がゆるやかに広がっていく感覚がすでに心地よい。
何から食べようと悩むのも幸せな前菜盛り合わせにお酒がついつい進む!
少しずついろいろ食べられる前菜の盛り合わせは、ただでさえ食いしん坊の心をときめかせるが「umedaya」は、一品一品がさりげない存在感をもって一皿に盛られており、一口ごとに楽しい驚きがある。サフランリゾットを詰めたイカ飯やペコリーノチーズと枝豆のキッシュなどを味わい、心の中で歓声をあげながら、気づけばワイングラスが空に。膨大な仕込みを想像すると頭が下がるが、手塚さんの料理は押しつけがましさが皆無で「シンプルにおいしい料理を食べてほしい」という気持ちが舌と心に伝わるから、うれしくてつい飲みすぎてしまうというのは、もちろん自分への言い訳だ。
たっぷりうまみが凝縮されたトリッパに思わずワインも飲みっぱ!
主にフレンチ歴が長いシェフだが、ジャンルレスなメニュー構成も魅力的。トリッパトマト煮は内臓を使う料理とあって、臭みをいかに除き食感にハリを出すかがおいしさのポイントだが、内臓と玉ねぎ、トマトの量を同じ比率で作るという煮込みはトマトのまろやかな酸味や玉ねぎの甘みがぎゅっと凝縮しており、濃厚な風味。ハチノスのしゃきっとした歯ざわりも際立っており、ほろ酔い気分になるにつれ「1人ずつのポーションだと、トリッパぐれがない」などとウキウキとした気分になる。