J開幕。なぜ神戸のビジャは不発に終わったのか?
東京ヴェルディを2017シーズンはJ1昇格、昨シーズンにはJ1参入プレーオフ決定戦に導いたスペインの知将は、昨シーズンまで4バックで戦ってきたセレッソの最終ラインを3枚に変えた。連日の非公開練習で現実的な戦い方を磨きあげ、注文通りにヴィッセルの攻撃陣を封じ込めた。 長い指導者人生でリージョ監督は常に理想を追い求め、ロティーナ監督は対戦相手の長所を緻密なポジショニングで打ち消す戦い方を積み上げてきた。舞台を日本に変えたスペインの同胞対決はまずは後者に軍配があがり、ビジャの不発も導かれたことになる。 昨夏にイニエスタが加入し、昨秋にはリージョ監督が就任。さらに今オフにビジャが加入し、さらに加速化された感のあるヴィッセルの「バルセロナ化」を、ロティーナ監督はこう看破していた。 「世界の超一流と呼べる素晴らしい選手たちがそろっていて、そのうえでリオネル・メッシが違いを作っていた。プレー内容に関しても結果に関しても、ほとんどの試合で彼が決定的な選手になっていた」 昨シーズンのリーグ戦におけるヴィッセルのチーム得点王は、5ゴールで並んだポドルスキ、FWウェリントン、夏場にFC岐阜から移籍したFW古橋亨梧の5ゴール。当然ながら物足りない数字だし、アメリカのニューヨーク・シティFCからビジャを獲得した狙いも、言うまでもなく得点力不足の解消にある。 しかし、ふたを開けてみれば真ん中ではなく、左サイドを主戦場とする起用だった。思い描いていた光景と違ったからか。試合後にはヴィッセルのオーナーで、親会社の楽天株式会社代表取締役会長および社長の三木谷浩史氏がロッカールームのリージョ監督のもとへ直行している。 「この試合のために多くの時間をかけて準備してきた。結果的には上手くいかなかったが、シーズンはまだ始まったばかりだし、我々が目指しているものは必ず高いところへたどり着くと信じている」 ビジャは心配無用を強調し、スペイン代表時代の盟友、フェルナンド・トーレスを擁するサガン鳥栖と対峙する3月2日のホーム開幕戦を見すえた。しかし、上手さと怖さを融合できず、ゴールと勝利を奪えない状況が続けば、やがてはビジャのポジション論争が勃発するかもしれない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)