発がん性指摘のPFAS、水道水は安全か 高濃度の岡山では血液検査、国は全国調査着手
岡山県が汚染源究明のため取水源のダムの上流地域を調査したところ、山中の資材置き場で約600袋の使用済み活性炭を発見。この土壌からも高濃度のPFOSとPFOAが検出され、袋の破れなどから汚染が土壌に浸透し地下水に混入したと考えられている。
町は取水源のダムを変更するなどして数値を改善させ、昨年11月に飲用制限を解除した。
給水区域の住民には不安が広がった。一部の住民が専門家に依頼して独自の血液検査を実施したところ、PFASの血中濃度が、健康リスクが高まるとされる値を超過した。
町は今年6月、公費で行う希望者の血液検査の概要を発表。山本雅則町長は取材に対し、「国は暫定目標値を設定した令和2年になぜ水道水の全国調査を実施しなかったのか。想像だにしなかった原因で多くの町民が被害を受けた」とした。
■地下水を飲用しないよう呼びかけ
一方環境省は今年3月、38都道府県で行った河川や地下水などの調査結果を公表。合計が最も高かったのは大阪府摂津市の地下水で、1リットル当たり2万1千ナノグラムだった。
摂津市は市内の地下水が飲用されていないことを確認。「引き続き地下水は飲まないように呼びかける」といい、水道水は基準値以下だとして、現段階では市民の健康調査は予定していない。
検出地点周辺にある民間事業所から漏れ出したとみられ、同事業所が遮水壁を設置したり浄化設備を増強したりなどの対策に取り組んでいる。市の担当者は「PFASの除去や規制など、具体的な対応や法整備がまったく定まっていない」とし、国の対応への困惑を漏らした。
■「規制遅れる日本、複数回調査を」小泉昭夫・京大名誉教授
PFAS規制に関して日本は先進国では最も遅れている。15年ほど前から環境省は小さな調査を続けてきたが、有効な手は打ってこなかった。
慣習として日本では毒性や病気との因果関係が明らかになってから規制値を設定する。PFASは汎用(はんよう)性が高いだけでなく、半導体など先端技術に使用されるため、経済産業省や企業に配慮したのかもしれない。