武田砂鉄が“定額働かせ放題”を問う!──文科省からNHKに対する“圧力”文書問題
公立学校教員の給与体系を「『定額働かせ放題』とも言われる枠組み」と報じたNHKに対して、文部科学省は抗議文書をウェブサイトに掲載した。ライターの武田砂鉄が斬り込む。 【写真を見る】記憶がない、ちょっと思い出してきた、やっぱり記憶がない!
公権力によるメディアへの圧力
たとえば、こんな報道があったとして、あなたはどこに問題があると感じるだろう。 「“ブラック校則”とも呼ばれている校則、いち早く改善が求められます」 「“魔の交差点”として地域住民の間で知られている交差点、どうすれば、事故が減らせるのでしょうか」 もちろん、問題は校則や交差点にある。はっきりしている。生徒の自由を過度に奪うような校則はいい加減変えなければいけないし、事故が続いている交差点では、なぜ事故が起きやすいのか、分析が求められる。学校側が「ブラックとか言わないでよ」とか、道路を管理する側が「さすがに“魔”は言い過ぎ」なんて返してきたら、いい加減、問題を直視してください、と返すだろう。 先日、文部科学省の中央教育審議会の特別部会が、教員の働き方改革についての提言をまとめ、盛山正仁文部科学大臣に提出した。これまで、公立学校教員に対して、残業代を出さない代わりに支給してきた月給4%相当の「教職調整額」について、「少なくとも10%以上に引き上げる」とした。調整額を定めている法律が「教員給与特別措置法」、この改正案を来年の通常国会に提出するという。教員不足が叫ばれて久しいし、不足すればするほど業務過多となり、それを知って、ますます成り手が不足するジレンマの中にある。 ある程度の時間は残業が生じるだろうから、あらかじめ払っておきます、と言わんばかりの「教職調整額」は、「定額働かせ放題」と呼ばれてきた。今回、10%に引き上げたとしても、労働時間にあわせて残業代が払われるわけではないので、引き続き「定額働かせ放題」と言われても仕方ない。終業から次の始業までの休息時間「勤務間インターバル」について、11時間を目安に確保することなども盛り込まれており、教員の働き方を今のまま放置するわけではないが、いくら残業しても上限が決まっている制度に変更はない。