武田砂鉄が“定額働かせ放題”を問う!──文科省からNHKに対する“圧力”文書問題
5月17日、「文部科学省初等中等教育局長」が「日本放送協会メディア総局長」あてに、抗議文を出した。その抗議文によると、13日の「貴放送協会の報道」で、「定額働かせ放題、どれだけ残業しても一定の上乗せ分しか支払われない教員の給与の枠組みはこのように呼ばれています」「定額働かせ放題ともいわれる枠組み自体は残ることになります」と報じたが、この報道は「現行の仕組みや経緯、背景について触れることなく、一部の方々が用いる『“定額働かせ放題”の枠組み』と一面的に、教育界で定着しているかのように国民に誤解を与えるような表現で報じるものでした」とした。 その上で、「国民の皆様の正確な理解につながるよう、丁寧な取材に基づき、多面的に、公平かつ公正に取り扱う報道をするように求めます」と締めくくっている。明確な事実誤認があったのならば、訂正しなければいけない。たとえば、「歴代の文科大臣は、教師に対して残業代を払うなんて絶対に認めない、との考えを踏襲してきました」などと断定したり、「今、働いている現役教師は一人残らず、“定額働かせ放題だ”と憤りながら改善を訴えています」などと膨らませてはいけない。 でも、今回のNHKの報道は、まさに抗議文で引用されているように、「給与の枠組みはこのように呼ばれています」「定額働かせ放題ともいわれる枠組み」と、報じる側が主導してその言葉を使うのではなく、世間でそのように「呼ばれて」いる、「いわれる」ものであると、むしろ、直接的に断言するのを避けている。「こうなのではないか」ではなく、「このように言われている」とする報道は、いかにもNHK的な、踏み込みの甘いニュースに思えるのだが、この報道に対して、文科省は「公平かつ公正に取り扱う報道をするように」と苦言を呈した。 明らかな事実誤認ではない報道に対して、萎縮させるような抗議文を送ったことになる。盛山文科大臣が24日の会見で、抗議文について、記者から「圧力ではないか」と問われるとそれを否定、「我々としては、もう少し背景も含めてよくご理解をして報道していただきたいという、要請をしたということでございます」と述べ、「マスコミさんに対して、我々が思っていることと違うような報道がなされた場合、あるいは、場合によっては事実無根の誤認があった場合、何らかの形で、これまで、我々のほうから、文章その他で、ご連絡をしている、あるいは電話でのご連絡もあるんだろうと思います。まぁ、そういうことがあるんじゃないかと思います」と続けている。