氷上の新格闘技?!初上陸レッドブル・クラッシュドアイス横浜大会でメダルを狙う36歳“レジェンド”山本純子の決意
大興奮必至の氷上の新スポーツが日本初上陸。アイスクロスダウンヒル世界選手権「レッドブル・クラッシュドアイス」が横浜みなとみらいの臨港パーク特設会場で12月7、8日の両日に開催される。最大斜度42度、高低差が約22メートルある全長約350メートルのヘアピンあり、アップダウンあり、ジャンプ台ありのバラエティに富んだ特設の氷のコースを4人の猛者が体を激突させながら滑走して競う競技でアイスホッケー、ダウンヒルスキー、 スノーボードクロスの要素を取り入れた新スポーツだ。実は、日本女子としてただ一人、8年前の創設時からフル参戦しているレジェンドがいる。山本純子、36歳。地元開催の追い風を背に初のメダル獲得を狙っている。
まるで崖だ。斜度は42度。建設途中のコースを下見した山本は、ビルの5階に相当する高さ12メートルのスタート台からドロップインと呼ばれる仕掛けが2つ待ち受けている難解な序盤コースを見下ろした。パシャパシャと写メを撮影しながらイメージを膨らませていた。 「この2つのドロップインのあるスタートは世界ではあまり例がないですね。蹴った方がいいのか、飛んだ方がいいのか。勝負の大きなポイントです。選手にとったらハードで厳しいコース。ひとつふたつの技術では滑りきれない。ミスの出やすいセクションもある。下見ができて、どう滑るかイメージできたのは大きかったです。これも日本開催のアドバンテージです」 4人で同時滑走するクラッシュドアイスには常に転倒というアクシデントがつきまとう。途中、様々な障害が用意されていて最後の最後までどうなるかわからないという醍醐味がある。ジャンプ台では空中戦。「滑るというより飛ぶ」のイメージ。男子では最速80キロにも及ぶ。ヘアピンなどの激突必至の密集内では相手をつかんだり、押したりの行為は反則だが、目に見えないところでの激しい攻防がある。まるで氷上の格闘技。そこにはアイスホッケーの技術が応用されるという。減速する箇所では「パンキング」と呼ばれる膝と全身を使ってスピードアップする技術も必要になり、「意外とスタミナが必要なコースかもしれない」という感想も口に。 特殊な冷却装置の上に約10センチの氷を張るが、気温によって、その硬さも微妙に変化。柔らかくなるとパワーが必要になり、何人もが滑り降りるため、穴ができることもあり、ライダーと呼ばれる選手を悩ませることになる。 横浜では氷点下にはならないだろうが、海外ではマイナス20度の極寒の中でレースをしたこともある。 スケート靴はアイスホッケー用の接地面を長く調整したものを使用する。怪我防止の装備は必須だ。山本は幸いにも切り傷程度の経験しかないが、激しいバトルと転倒で骨折や打撲は当たり前。ヘルメットは選手によりアイスホッケー用、モトクロス用など様々だが、山本はスキーのアルペンレース用を使う。ジャージの上下は、パッドが入ったアイスホッケー用のもの。空気抵抗をなくすため、ジュニア用のサイズの小さいものを着用し、いらないパッドは外している。 レースを左右する生命線はスタートだ。技術力のある選手が先頭に立つと、逃げ切りパターンが常道。山本が下見でスタートから飛び出すシミュレーションを頭の中で繰り返して神経を集中させたのも無理はない。しかも、そこが山本の課題だった。 「苦手という言葉は使いたくないんですが、スタートが課題」 だが、今回は、オフの間にスタートの克服をテーマにトレーニングを積んできた。