《門田博光の巻#2》深夜2時に“麻雀部屋”まで牛丼を届けに行った僕に3万円をポンと渡した太っ腹【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】
【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】#37 門田博光(2) ◇ ◇ ◇ 【写真】《門田博光の巻》「打撃の求道者」は練習方法もケタ外れだった…僕が地獄を見た“10分”の要求 門田博光さん(享年74)ほど、打撃の追求に熱心だった人を僕は知りません。 ティー打撃の練習でも強いこだわりがありました。地面に白線を引き、「このラインの軌道で投げてくれ」と投げ手に注文。常に実戦を意識し、外側から入ってくるボールを想定していました。 そんな門田さんに深夜、突然呼び出されたことがあります。昔の野球選手は麻雀好きが多く、門田さんもそのひとり。選手寮にも専用の部屋があり、多くの選手が夜な夜な卓を囲んでいました。午前2時、僕が寝ていると門田さんから電話があり、「おう、寝てたか? すまんな。ちょっと牛丼買ってきてくれ。4杯……いや、おまえの分も合わせて5杯な」。 お金は立て替えて、24時間営業の吉野家で牛丼を購入してから麻雀部屋へ。すると、門田さんは「ありがとうな」と、3万円を僕にそのままポンとくれました。 「いやいや! 領収書あるんで……」 「いらんいらん。取っとけ、取っとけ」 牛丼5杯で3000円もかかっていません。差し引き、2万7000円以上の臨時収入。その太っ腹には驚かされましたが、いかんせん、当時は打撃投手で給料が安かった時期。感謝すると同時に、「毎日、電話くれんかな」と思ったものです(笑)。 そうした豪快さに影響された選手は少なくありません。 あれは佐々木誠さんが年俸1億円を突破した直後のこと。何人かで飲みに行くと、誠さんは「今日は俺が全部出すぞ!」と、高いお酒をどんどん注文しました。僕は隣の人に「乾杯は一気やぞ」と、言われるままに一気飲み。すると真顔の誠さんから、「いっちゃん、そんな飲み方する酒じゃないから、これ」と注意されました。後で知りましたが、僕が一気飲みしたのは1本数十万円はするブランデー、レミーマルタンの「ルイ13世」。そりゃ注意されるわけです(笑)。それでも誠さんは飲みきれなかったお酒はキープしたりせず、「残りは持って帰っていいよ」と門田さんに負けず劣らずの太っ腹でした。 そんな誠さんですが、こと野球においても門田さんの影響を大きく受けていました。次回はその話をしましょう。 (田尻一郎/元ソフトバンクホークス広報)