完全オンラインのバリアフリー教養大学、26年春開校目指す
障害にかかわらず好きな時に自由な学びを――。これをキーワードにした「バリアフリー教養大学」の設立認可を設立準備法人の大学教員らが10月、文部科学省に申請した。AI(人工知能)、ITの最新技術を生かし、「寝たきりでも、介護や看病しながらでも、すべての人に機会を」(斉藤くるみ学長=日本社会事業大名誉教授、言語学)と、2026年春の開学を目指す。 障害者差別解消法が今春に改正されたものの、特に障害者の学びの門戸は依然として狭い。このため研究者や障害の当事者らが3年前から高等教育機関づくりを検討してきた。 申請によると、既存の大学と違って完全オンラインの仮想キャンパスで、文部科学省が推奨しているCOIL型教育により運営する。教員の半分以上は障害者やLGBT(性的少数者などマイノリティー)の当事者とし、蔵書はデジタルまたは古本を活用する予定。 定員225人の合否は小論文と面接で決める。「採点者には同じ障害のある人を加えた配慮をする。同じことを伝えたいとしても、障害によって表現の仕方(文法)が異なるため。多様性を尊重し、福祉とも連携して障害者の秘めている才能を伸ばしたい」と斉藤学長。手話動画によるレポート、卒業研究も認める方針という。 費用は入学金10万円のほか授業料29万円だが、4年間で卒業に必要な単位が取れない場合は2年間の在籍延長(障害など事情よっては延長による授業料は免除)を認める。 理事長には全盲で社会福祉法人日本ライトハウスの日比野清理事、学部長は辻浩・元名古屋大教授(生涯教育論)、顧問には全盲ろうの福島智東大先端技術研究センター特任教授が就く予定。 COIL型教育=「オンラインを活用した国際的な双方向の教育手法」。日本社会事業大(東京)は2019~21年度、米国の首都ワシントンにあるろう者のギャローデッド大(私立)と結んで4言語(日本語・英語・日本手話・米国手話)により共同授業を実践。講義や学生同士の対話(手話動画)、定時に受けられない講義はいつでも繰り返し見たり聞いたりを可能にした。IT技術などにより、目の不自由な学生向けにテキストや図、写真を音声や点字にし、聞こえない人には音声を文字化する。 障害学生の進学率=24年春の特別支援学校高等部から大学・短大・高専への進学率は1%、全学生の1・53%だった。視覚、聴覚、言語障害、肢体不自由のほか、特に増えたのは精神障害、発達障害、病弱・虚弱という。障害学生比率は米国20・5%、英国(1年次)17・3%(各19~20年)に比べ格段に低い(文科省「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告」24年3月)。