<春再び・センバツ2021東海大相模>/下 走塁絡めた攻撃的打線 甲子園では打ち勝つ /神奈川
◇1日1200回、振り込み強化 強打で知られる東海大相模の4番打者は、2020年夏までのチームでは主に投手として起用されていた。柴田疾(はやて)選手(2年)が打線の軸として抜てきされたのは新チームがスタートしてからだ。最初は「相模の4番は打たなければならない場所」とプレッシャーを感じていたという。 20年8月、阪神甲子園球場。マウンド上では石田隼都投手(同)が躍動していた。柴田選手はメンバー入りできず、野球部の寮でテレビ観戦していた。強豪の大阪桐蔭打線を相手に真っ向勝負をする同級生の姿は自身が知る「普段のおっとりした石田」とは別物だった。「すごいな」。そう思うと同時に、悔しさもこみ上げた。 秋季県大会は、「アウトになることは罪」と思うほど4番の重圧があった。思うようなバッティングができなかった柴田選手は「(周りにも)バレバレなくらい焦っていた」という。そんな時、ベンチで声を掛けてくれたのは石田投手だった。「お前なら行ける」。信頼する「絶対的エース」からの一言に、「(バットで)援護して、石田を楽にしたい」と奮起した。この大会、準決勝と決勝で本塁打を放ち勝利に貢献した。 ところが、秋季関東地区大会2回戦で悔しい思いをする。東海大甲府(山梨)に1点をリードしていた九回表に、無死一塁で打席が回ってきた。追加点が欲しい場面に、ベンチからのサインは「バント」だった。犠打は成功したが、後続が倒れ、無得点。試合は九回裏に逆転され、サヨナラ負けを喫した。 「任せてほしかった」と4番のプライドをのぞかせた柴田選手。「ヒッティングで期待されるような選手になりたい」。自身は初めてとなる甲子園の舞台に向け、「つないでもらったら、絶対にランナーを還す。打撃の中心になる」と意気込んでいる。 リードオフマンの大塚瑠晏(るあん)主将(2年)、主軸の柴田選手のほか、打線を引っ張るのは前チームから出場機会があった門馬功選手(同)や小島大河選手(同)らだ。谷口翔生捕手や秋季大会で上位打線を務めた伊藤航大選手などの1年生の活躍も期待される。 東海大甲府戦を、大塚主将は「石田というエースに頼りすぎていた」と振り返る。東海大相模のチームスローガンは「アグレッシブベースボール」。積極的な走塁を絡めた攻撃が持ち味だが、発揮できなかった。 「もっと点数をとろう。もっとバッティングを全員で上げていかなければ」。新型コロナウイルスの影響やグラウンドの工事で練習が制限される中、1日1200回、スイングスピード140キロ以上という目標を立てて振り込みを強化している。大塚主将は言う。「甲子園では打ち勝ってやる」 (この連載は宮島麻実、池田直が担当しました)