被害者9万人か 脱毛「アリシアクリニック」倒産 過当競争でエステの閉業相次ぐ
医療脱毛大手「アリシアクリニック」を運営する医療法人社団「美実会」(さいたま市)と一般社団法人「八桜会」(東京)は10日、東京地裁から破産開始決定を受けた。ホームページで同日、破産管財人が明らかにした。債権者は9万人にのぼるとみられ、エステ業界の倒産としては過去最大規模となる見通しだ。近年、脱毛サロンなどエステ業界では、大手を含め倒産が相次いでいる。新型コロナウイルス禍や過当競争、独自の前払いシステムが原因として指摘されている。 ■負債総額約125億円 東京商工リサーチによると、美実会が運営する「アリシアクリニック」と八桜会が運営する旧「じぶんクリニック」は計約60店舗を全国各地で展開。有名俳優を起用した広告などで業績を伸ばしたが、徐々に売り上げは下降し、昨年4月期は売上高134億7380万円となり、約7500万円の赤字を出していた。 2社合計の負債総額は124億7133万円で債権者は9万1818人にのぼった。約10万人が利用していた脱毛サロン「銀座カラー」を展開していたこともあり、昨年12月に倒産したエム・シーネットワークスジャパン(東京)に匹敵する規模となった。破産管財人によると、未施術分の前払い料金や退会に伴う清算金などの返金は難しい状況だという。 東京商工リサーチの調べによると、脱毛や痩身(そうしん)、美肌などエステ業界の倒産数は急増傾向にあり、今年は10月末までに87件。過去最多だった令和5年の88件を超え、100件を超える勢いになっている。 ■低い参入障壁 一因となったのがコロナ禍の影響だ。倒産数は平成31・令和元年が73件だったものの、コロナ禍が本格化した2年は62件、3年は42件に減少した。営業制限や感染リスクから来客数は減ったが、行政による資金繰り支援があったためだ。ただ、こうした支援が最近打ち切られる一方で、コロナ禍では自宅で行えるセルフエステが定着した。コロナ禍が収束した後、客足を戻していく上でマイナス要因になった。 エステ産業は従業員数5人未満の会社が9割近くを占める。参入障壁が低いとされ、競争が激しい。加えて、低価格を売りに、客から前払い金を受け取って事業拡大の原資にする自転車操業的なビジネスモデルが問題だと指摘する声もある。(五十嵐一)