「無断で死体を埋められた」「お金を払ってくれない」…ムスリム土葬墓地経営者が明かす、墓不足の「実態」と当事者の「深刻な悩み」
14体もの遺体が無許可で埋葬された
思わぬ事件が起きたのは、経営難に苦しんでいた2019年初めの頃だった。 「霊園の敷地内にムスリムの遺体が私の許可なく埋葬されていたのです。普段足を踏み入れない場所に重機が通った跡があり、それを辿っていくと石とブロック塀が並べられていました。調べたところ、そこには遺体が埋葬されていました。 私の許可なく埋葬していたパキスタン人は群馬県伊勢崎市にあるモスクの関係者を自称していました。土地をめぐるトラブルがあったのは先にお話した通りです。彼は『私はこの土地を購入している』という主張を譲りませんでした。その後も遺体の無断埋葬は続き、合計で14体もの遺体が埋葬されました。 イスラム教では埋葬は死後早いほどよいとされており、彼らは夜中に遺体を埋めるので現場をおさえられませんでした。警察に相談したところ、『現行犯じゃないと対応できない』とのことでした。そこで、監視カメラを設置したところ、ある日、夜中に重機が現れた。『これは埋葬するな』と思ったら、案の定でした。 警察に協力してもらい現場を取り押さえましたが、そこには20人ほどのムスリムがいました。私が管理する霊園内での出来事ですが、彼らは『土地を購入しているから問題ない』と言い張ります。結局、警察立ち合いの下、2019年10月に事務所内で念書を取り交わしました。このときばかりは、パキスタン人の男も態度を一変させ、しきりに『もう二度をやりません』と頭を下げていました」
「無断埋葬」事件の結末
無断で埋葬された14体もの遺体はいまも残る。早川さんは続ける。 「許可なく埋葬されたとはいえ、一度埋めたものを掘り返すことはできません。亡くなった方に罪はありませんからね。結局、そのまま墓地にして、いまでも残っております。 本来、正規の埋葬代金を請求したいところでしたが、200万円を支払ってもらうことで話をまとめました。男は警察官の前で念書に署名・押印し、その書類はいまでも保管してあります。もっとも、1銭も支払われていません。数ヵ月後、念書を取り交わしたパキスタン人は行方不明になり、現在に至っております」 このトラブルについて、本庄市役所の担当者はこう話した。 「土葬については経営者・管理者の方が判断するものであり、行政としてはいいともダメともいう立場ではありません。(埋葬をめぐり、本庄児玉聖地霊園で)トラブルがあったことは把握しておりますが、民間同士のやりとりのため、こちらが何か言える立場にはありません」 予期せぬ事態に困惑した早川さんだったが、東京都・大塚にモスクを置く宗教法人「日本イスラーム文化センター」の責任者から数年前に「ムスリム向けに区画を購入したい」という打診があったことを思い出した。 「大塚のモスクに連絡したところ、改めて『ムスリムの墓を受け入れてほしい』との話がありました。お墓がある限り、何としても霊園を維持していかなければいけません。ある意味、苦渋の決断ではありましたが、受け入れを決め、遺体が無断埋葬されていた場所の近くにムスリム専用の区画をつくりました」