【この冬、佐渡へ旅したい】佐渡の東海岸へチョコレートの冒険に
廃墟同然だった公共施設は、土地の伝承をちりばめながら、ポップカルチャーと民芸の要素がミックスした不思議な空気を醸している。 不揃いのテーブルと椅子からお気に入りの席を選び、ホットチョコレートと「タンザニア」をオーダーして味わう。ひとかけのチョコレートから広がる世界観は、はじめはほろ苦く、徐々に広がる酸味からワインのような奥深さへと変容。その味わいは、まるで「分子ガストロノミー」のようだ。 勝田さんが壁にぶつかりながらも歩んできた人生の軌跡が、チョコレートの風味を一層豊かにしているのだろう。港や人里から離れた場所は、オープンの時間を迎えると同時に地元客と思しき数組の客で賑わった。 昨年、期間限定で販売したチョコレートのパッケージには、禅をはじめとする東洋や日本の思想を海外へ伝えた人物として知られる鈴木大拙の言葉がデザインされていた。“偉大な仕事は、人が打算的になっておらず、思考しているときになされる”。その言葉は、勝田さんがチョコレートと向き合う姿勢のように感じられた。 「莚 CACAO CLUB」 住所:佐渡市莚場1100 電話:0259-58-9080 BY TAKAKO KABASAWA 樺澤貴子(かばさわ・たかこ) クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークや、日本の手仕事を礎とした商品企画なども手掛ける。5年前にミラノの朝市で見つけた白シャツを今も愛用(写真)。旅先で美しいデザインや、美味しいモノを発見することに情熱を注ぐ。