トヨタの配偶者手当廃止で日本の家族手当は変わる?
トヨタ自動車が、現行の家族手当の見直しを検討している。年収103万円以下の配偶者に支払われていた手当をなくす代わりに、子供への手当を1人当たり4倍に増額するというものだ。「昭和から変わっていない」という日本の民間企業の家族手当のあり方は、トヨタの見直しを機に、変わっていくのだろうか。
配偶者手当から子供手当へ
トヨタ自動車労働組合によると、現在トヨタでは、年収103万円以下の配偶者ら「第一扶養者」に、月1万9500円が支払われている。一般に「配偶者手当」と呼ばれるものだ。同組合によると、経営側から提案されている新制度はこの「配偶者手当」をなくし、代わりに今まで子供一人当たり5千円支払われていた子供手当を、月2万円に増額するという内容。経営側は2016年1月から徐々に新制度に移行し、19年には完全に切り替えたい考えだが、労組側は21年までの5年間でゆるやかに移行することを求めて協議しているという。 労組は労使間で制度見直しに入った背景をこう語る。「昭和20年代からある制度で、昔は賃金も高くなく専業主婦家庭が一般的だったため、扶養する家族が増える分家族手当を支給するという制度が出来上がった。だが近年は賃金も上がり、共働き世帯が多くなってきた」。そのような社会変化に対応するため、労使間で「専業主婦世帯だけを優遇する内容は形を変える必要がある」との認識で一致したという。 労組は「あくまで組織内部での公平な家族手当のあり方を考え直すもの」と説明する。しかしこうした民間企業の「配偶者手当」の見直しは、女性の社会進出を促そうとする安倍政権の政策の流れと一致するものだ。安倍総理は昨年10月、「女性の活躍に向け、総合的に具体的取組の検討を進めていただきたい」として、国家公務員の配偶者手当のあり方について見直しを指示している。なぜ配偶者手当の見直しが、女性の社会進出を促進すると考えられているのか。 配偶者手当見直しの議論は、安倍政権が見直しを進めている「配偶者控除」と関係する。ここで問題とされているのが、「103万の壁」「130万円の壁」と呼ばれるものだ。