トヨタの配偶者手当廃止で日本の家族手当は変わる?
「103万円の壁」と「130万円の壁」
「103万円」とは、所得税の配偶者控除の対象となる額だ。会社員の夫とパートの妻で暮らす家庭の場合、妻の年収が103万円以下であれば、夫の給料の38万円分が課税されずに済み、妻は所得税がかからない。「130万円」とは、社会保険料が課されるようになる額だ。妻の年収が130万未満であれば、妻は年金や健康保険料を支払わなくて済む。 民間企業の「配偶者手当」はこの税制に合わせ、給与対象を年収103万以下か130万円未満の配偶者に設定していることが多い。もし会社が配偶者手当を月に2万円支払っていたとすれば、配偶者の年収が103万を超えてしまうと、もらえたはずの配偶者手当が受け取れなくなり、月2万円×12カ月分=年間24万円の損に。また、配偶者の年収が130万円を超えると、社会保険料の支出が1人分増えることになる。このため、収入額によっては配偶者が「働いた方が世帯所得が下がる」という状況も生まれかねず、控除や配偶者手当の対象になる年収103万円以下や130万円未満に抑えるように労働を抑制している女性が多いとされているのだ。 昨年10月の経済財政諮問会議では、民間議員らが「配偶者手当については、103 万円や130 万円の給与所得まで一定額で支給され、その後はゼロになることで可処分所得が減少する要因となり、働く意欲を阻害」していると指摘し、見直しを提言。政府や経団連らが参加する政労使会議でも同12月、「政府は、女性が働くことで世帯所得がなだらかに上昇する制度となるよう税制や社会保障制度を見直す。配偶者手当についても、官の見直しの検討とあわせて、労使は、その在り方の検討を進める」と、政府の配偶者控除などの見直しに合わせ、民間でも配偶者手当を見直す検討を進めることが確認されている。 人事院が全国の民間企業の給与実態を調べた2014年の「職務別民間給与実態調査」によると、全国の従業員数50人以上の会社で家族手当制度があるのは76.8%。そのうち92.7%が配偶者手当を支給している。日本の産業界を代表するトヨタの動きが、他企業の家族手当見直しの呼び水になるかが注目される。(THE EAST TIMES)