讃岐うどんを紙に再生、第一弾「丸亀うちわ」来年にも商品化…「うどん県」につきまとう麺の廃棄問題解消へ
讃岐うどんから紙を作り出す――。香川大学の研究者が、酵素と微生物を使って「うどん再生紙」を開発し、実用化の準備を進めている。「うどん県」として知られる香川県では、廃棄される多量の麺が問題となっており、アップサイクルで食品ロスの解消を目指す。(高松総局 浦西啓介)
新たな特産品に
開発したのは、農学部の田中直孝教授(応用微生物学)。麺と水をミキサーにかけて酵素を入れ、うどんのでんぷんをブドウ糖に変化させる。このブドウ糖を栄養に微生物を培養すると、炭水化物の一種「セルロース」の膜が生成され、乾燥させると紙になる。
香川県内の「そば・うどん店」は、人口1万人当たり5・08店(2021年)で全国トップ。讃岐うどんはゆでるのに時間がかかるため、客を待たせないよう「ゆで置き」が一般的だ。
一方、時間が経(た)つとコシがなくなり、味が落ちるため、その日のうちに食べないといけない。このため、廃棄が多く、その量は、使用される小麦粉換算で年間3000トン以上と推定される。
うどん再生紙は、紙をすく工程がなく、田中教授は「工場設備が不要で簡単に作ることができ、地域の課題解消の一助になる」として実用化を決めた。
うどん1玉からA4用紙5~10枚分を作ることができる。一般的なコピー用紙と比べて薄く、重さは5~10分の1以下。引っ張っても破れず、水に強く、湿らせると接着剤なしで貼り付く特徴がある。
製造は、社会福祉法人を運営する知人が「障害者の雇用拡大につながる」と引き受けてくれた。商品化の第1弾として、「日本三大うちわ」の一つとして知られる香川県丸亀市の「丸亀うちわ」に着目。来年の商品化を予定している。
田中教授は「折り紙や紙風船、シールなど幅広い商品が考えられる。うどん県ならではの新たな特産品にしたい」と話す。
アップサイクル、各地で取り組み
本来捨てられるはずの地域の特産を、新たな商品に生まれ変わらせる取り組みは、各地で広がっている。
長野県では、リンゴジュースの製造過程で出る搾りかすを使った合成皮革「りんごレザー」のバッグや財布が販売されている。