火星で巨大火山を発見、裾野は約450kmでエベレストより高く活動期間は37億年超、米学会
侵食が激しい「ノクティス・ラビリントス(夜の迷宮)」で見過ごされていた、異論も
高さはエベレストより少し高い9000メートル超、裾野は最大で東京~神戸間より長い450キロにおよぶ巨大な火山を火星で発見したと、2人の研究者が主張している。現在活動している兆候はないが、地質学的には「比較的最近」まで活動していた、驚くほど古い火山の可能性がある。何十億年にも及ぶ火星の歴史の大部分に関わっているのかもしれない。 【関連画像】巨大火山「ノクティス」の地形図 「私たちは、これが本当に巨大な火山であることも、これまで報告されていないことも信じられませんでした」と発見者の一人である米SETI研究所の惑星科学者パスカル・リー氏は語る。「興奮したと言うのが正しいかもしれません」 リー氏らは3月中旬、米国テキサス州ウッドランズで開催された月惑星科学会議で研究成果を発表した。水で侵食された洞窟やトンネルが広大な迷路を織り成す「ノクティス・ラビリントス(夜の迷宮)」で発見されたことから、研究チームは「ノクティス」火山という仮称を付け、科学界の分析を待っている。ノクティスは長年にわたる水と氷河の動きによって大きく侵食されており、それがこれまで見過ごされてきた理由だと研究チームは主張している。
「さらに研究する価値がある」
巨大火山の発見を誰もが認めているわけではない。リー氏らの論文はまだ査読を受けておらず、発表を見た人たちは興味をそそられながら、疑いの目も向けている。 「研究チームの主張には興味をそそられますが、完全に納得できるものではありません」と米NASAジェット推進研究所の惑星科学者ロザリー・ロペス氏は話す。「この地域は侵食が激しいため、はっきりしたことは言えません」。ただし、ロペス氏は「私たちのほとんどは、それでも興味深いアイデアであり、さらに研究する価値があると考えています」と言い添えている。ロペス氏は今回の研究に参加していない。 かつて、火星は火山活動が盛んで、爆発や噴出をともなう噴火が数え切れないほど起きていた。そして、エベレストの3倍も高い有名なオリンポスなど、真の巨大火山がいくつか生まれた。オリンポスに至っては、あまりの重さで、少し地下に沈んでしまったほどだ。 将来、火星で噴火が起きるかもしれないという興味深い兆候があるにもかかわらず、ほとんどの科学者は、火星は噴火の全盛期を過ぎているのではないかと考えている。また、観察眼の鋭い科学者によって、小さな火山の集まりは時々発見されているものの、大きな火山はすべて特定されたということになっている。 火星の大気は基本的に透明で、惑星規模の奇妙な砂嵐が起きたときを除けば、NASAの火星探査機マリナー9号が1971年に火星上空に到達して以降、火星の軌道を周回する探査機によって、その表面はほぼ継続的に調査されている。 そのため、リー氏と米メリーランド大学の博士課程に在籍するサウラブ・スバム氏が巨大火山を発見したと主張したことは驚きだった。