米で酷評の「ジョーカー2」レディー・ガガも加わり〝ダーク・ミュージカル〟の傑作か 映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
【エンタなう】 アメリカでは期待を裏切られたファンや批評家から酷評が相次いでいる「ジョーカー2」こと映画「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」(公開中)。しかし、ダーク・ミュージカルとしては、なかなか見応えがあった。 コメディアン志望の心優しい青年アーサー(ホアキン・フェニックス)が、道化師の扮装でジョーカーになるや、街の社会不安を味方につけて、狂気のカリスマに君臨。5人を殺害するなど凶悪犯罪を重ねたのが前作だ。まさにアメリカの世情を皮肉るような内容で興行的に大ヒットした。 今作では精神科病院に収容され裁判を待つアーサーが、音楽療法の合唱クラブで、謎の女性患者リー(レディー・ガガ)と出会って恋に落ちる。事件を知ってジョーカーに心酔していたリーと自分の居場所を初めて見つけたアーサーの心模様は、ほぼ全編がミュージカルのように歌で綴られる。 荒削りでパンチのあるアーサーの歌声と、手練れの〝鬼レンチャン〟覇者のように歌いあげるリーのデュエットは妙なギャップが、2人の道行きを暗示するようで、不穏なワクワク感がある。とくにカバー曲の数々のうちカーペンターズの名曲「遥かなる影(クロース・トゥ・ユー)」は悲哀に満ち、それでもプラトニックな光を放つのは音楽の底知れぬ力だ。 そして、心の中で奏でられる夢心地のショーと、劣悪な病棟で受ける仕打ちの対比が、どこまでも悲痛で救いがない。エンドロールの後、胸に強い虚無感が広がった。 (中本裕己)