ボーコンセプトの家具が、日本のユーザーに長く愛されてきた理由とは。
1952年、2人の家具職人がデンマークのハーニングという町で設立した小さな工房、それがBoConcept(ボーコンセプト)のルーツである。社名の「BO」とはデンマーク語で「生活」を意味し、多種多様なライフスタイルに溶け込む家具を世界67カ国340店舗で展開している。 【画像】もっと画像を見る(2枚) 2024年の秋冬コレクションでは、シンプルかつ機能的なデザインをベースにしながら、特にクリエイティビティとクラフトマンシップに着目。「1つの家具が空間に与える力」をテーマに掲げるラインアップとなった。 先日、「ボーコンセプト青山本店」(東京・南青山)で行われた新作発表会には来日して間もないコレクション&ビジュアル・ディレクターのクラウス・ディトレフ・イェンセンさんとプロダクトデザイナーのモートン・ゲオーセンさんが登壇。発表会終了後、さっそくふたりに話をうかがった。 「新作家具に共通しているのは優れたクラフトマンシップと空間をより上質なものへと昇華させるパワーです」と語るクラウスさん。
例えばコーヒーテーブルの「Tivoli(チボリ)」には、スタイリッシュでありながら無垢な存在感が漂う。サイズは3タイプ。芯材にはコンクリートを使い、表面は天然石のトラバーチンを模した人工素材で丁寧に仕上げている。デザイナーのモートンさん曰く、造形の過程はまるで子どものころの粘土細工のようだったそうだ。彼がデザインした新作はほかにも北欧家具の伝統からインスパイアされたオールナットのダイニングチェア「Seoul(ソウル)」、人気のSantiago(サンティアゴ)コレクションからはラウンド型のダイニングテーブルとサイドテーブルなどがある。いずれも装飾を最小限に抑えたミニマルなデザインが特徴だ。 「ミニマルデザインとは、デザインと機能との合理的なバランスです。どちらもおろそかにはできません。でも世の中にはデザインが美しくても機能性に欠き、使いづらい家具があります。私はその両方を最短距離でつなげるのがミニマルデザインだと考えています」 それはボーコンセプトが創業時から受け継いできたデザイン哲学でもある。モートンさんはそのDNAを次世代にも伝えようと努めているそうだ。 「社内には優秀な若手デザイナーが多くいて、彼らともよく話をします。でもなかなか“最短距離”のデザインを描くのは難しいようで……。結局のところ必要なのは私のように“長い時間”をかけた経験値なのかもしれませんね」。そう言ってモートンさんは苦笑いを浮かべる。 無駄を削ぎ落としたミニマルデザインは日本の伝統建築や石庭などの美意識にも通じる。ボーコンセプトの家具が日本のユーザーに長く愛されてきたのもそうした価値観への共感が背景にあるからなのかもしれない。 インタビュー取材が終わると、2人はすぐに次の滞在国へと向かう予定だという。まさに世界を股にかけるグローバル企業ゆえの多忙さだろう。最後はボーコンセプトの今後の展望についてクラウスさんに聞いた。 「私たちにとってミニマルな考え方はタイムレスなテーマです。ただ、これからはそれに加えてサステイナブルな視点がよりいっそう求められる時代になるでしょう。家具はファッションと違いトレンドに飽きたからといって簡単に買い替えられるものではありません。だからこそお客さまの求めるライフスタイルを一緒に考えるわれわれ独自の『インテリア デザイン サービス(IDS)』が重要な役割を果たすのではないでしょうか。購入した家具を長く愛してもらうためにも理想の空間づくりから真摯(しんし)にサポートしていければと思います」 BoConcept Aoyama ボーコンセプト青山本店 住所/東京都港区南青山2-31-8 L'arco 南青山ビル 営業時間/11:00~19:00(土・日 20:00) TEL/03-5770-6565 https://www.boconcept.com/ja-jp/ Photograph:Hiroyuki Matsuzaki(INTO THE LIGHT) Text:Satoshi Miyashita
朝日新聞社