危険運転やマナー違反だけではない LUUPが「悪目立ちする」存在になった2つの理由
Luupが仕掛けた「都心中心」のポート戦略
こうした「インパクトの強い車体」の効果がさらに強まるきっかけが、Luupのポート戦略にある。Luupは基本的に、ポートを都心中心に拡大してきた。言うなれば、チェーンストアの「ドミナント戦略」のようなものである。これは、あるエリアで集中的に数を増やし、そのエリアでの覇権を握ることだが、それを都心部で行ってきたのだ。 その効果は抜群だったようで、10月24日の会見で岡井氏は「例えば北参道駅のような場所のコンペがあるとき、シェアサイクル事業者が複数手を挙げても、基本的に弊社が選ばれます。渋谷方面に行きたい入居者のために、マンションやオフィスのオーナーは、そのエリアにポートを持つ弊社を選びます」と述べている。都心に集中的にポートを増やした結果、新しく都心にシェアモビリティができる際も、相互の乗り入れの便利さを含めてLUUPを選ぶ人々が増えているのだ。 この戦略は徹底していて、現在LUUP公式Webサイトでポートの配置を見ると、多摩川より西、そして荒川よりも東には現状、ポートが1つもない。川を基準に配置の有無を決めているのだ。東京の川向こう側に住む人の中には、LUUPを借りたのはいいけれど、返す場所がなくて困った人もいるだろう。それは、Luupの徹底したドミナント戦略によって発生するのだ。
メディアとの共犯関係
こうした都心部ドミナント戦略も、「悪目立ち」をもたらす。なぜか。LUUPの問題を扱うメディアは、基本的には東京に本拠地を置いている。となると、記事や番組を作る記者や製作陣の多くは首都圏に住むことになり、そこで報道される内容も無意識的に「首都圏中心主義」になりがちだ。 そんなメディア人の目に、最近やけに見慣れないLUUPの姿が入ってくる。しかも、利用者のマナーは悪いらしく、運営会社は何やら政府とズブズブの関係にあるらしい……となれば、取り上げざるを得ない。こうしてLUUPがメディアで「悪」のように扱われるようになるのだ。 その結果、読者や視聴者は自分のエリアの周りにLUUPがなくても(実際、LUUPは全国11都市にしかないのだから、無いエリアに住んでいる人の方が多い)、「なんとなくLUUPは危険そう」というイメージを持ち、全国的にふんわりとした「LUUP=悪」の論調が形成されていくことになる。