浮島丸の乗船者名簿、政府が保有 遺族訴訟では「不存在」
帰郷する朝鮮人労働者を乗せた旧日本海軍輸送船「浮島丸」が1945年8月の終戦直後、京都府の舞鶴港で爆発、沈没し500人以上が死亡した事件を巡り、政府が乗船者の大半が記された名簿を保有していたことが23日、分かった。ジャーナリスト布施祐仁氏の情報公開請求に厚生労働省が開示した。遺族らによる国家賠償請求訴訟で、政府は乗船者名簿を「乗船時に作成し船に備えたもの」と定義し沈没で喪失したと説明。名簿に類する文書の存在も明らかにしてこなかった。 同志社大の太田修教授(朝鮮近現代史)は、当時の状況が分かる貴重な名簿とし、戦時動員された朝鮮人労働者に関する日韓両政府の取り決めに基づき、韓国政府に渡すべきだと指摘する。 厚労省社会・援護局調査資料室は「開示したのは事故後の調査を経て作成された名簿だ。乗船時に作成し船に備えた乗船者名簿とは作成時期が違い、別物」と説明した。 浮島丸事件の死没者名簿は訴訟でも開示されたが、乗船者名簿がないまま死者をどう特定したのか、明確な説明はないままだった。