中国湖南省の小学校前で車が群衆に突入 大人と子供が数人負傷と国営メディア
ローラ・ビッカー、アイーシャ・ペレイラ 中国の国営メディアは19日、南部・湖南省常徳の小学校の前で車が群衆に突っ込んだと伝えた。中国では、大勢が無差別に襲撃されたと思われる事件が相次いでいる。 湖南省常徳での死傷者について、詳細は不明。国営メディアは「数人の児童と大人が負傷し、地面に倒れた」と報じている。病院には数人が搬送されているもよう。 現場では、白いスポーツタイプ多目的車(SUV)を運転していた人物が、保護者や学校の警備員らによって取り押さえられ、警察に引き渡されたという。 中国のソーシャルメディア「微信(ウィーチャット)」の個人アカウントに投稿された映像には、児童数人が地面に横たわっているほか、パニック状態になった子供たちがかばんを持って現場から逃げ出す様子が映っている。 学校に通う生徒の保護者はBBCに、「10数人がはねられて、何人かは重傷を負ったけれども、幸い救急車がすぐに到着した」と話した。自分は8歳の子供を送り届けて学校から離れようとしていたその時に、襲撃の音を耳にしたのだという。 「大勢を次々とはねていた車を、6人か7人の親が停車させた」のだという。 事件直後に撮影された動画では、暴走した車両の中に運転手がまだいる状態で、激しく怒る通行人が雪かきスコップで車体をたたいていた。運転手がその反対側から車を降りると、大勢に取り囲まれ、棒などでたたかれていた。 ■1週間で3件 中国では、大勢が無差別に襲撃されたと思われる事件が続発しており、この事件はこの1週間で3件目。 南部・広東省珠海のスポーツ施設で11日夜に車が利用客らに突っ込んだ事件では、少なくとも35人が死亡した。16日には東部・江蘇省の学校で、刃物による殺傷事件があり8人が死亡した。 ソーシャルメディアでは、「社会への報復」という社会現象について議論されている。これは、個人が抱える怒りや恨みを他人に向けて攻撃する行動とされる。 警察によると中国では今年、加害者と被害者の間に面識のない無差別暴力事件が19件起きている。それによって63人が殺害され、166人が負傷した。2023年には同様の事件で16人が殺害され、40人が負傷しているため、今年は前年から被害者が大幅に増加したことになる。 こうした事件の発生そのものは散発的だが、その都度、非常に注目される。事件発生から間もなくソーシャルメディアで動画が拡散されることも珍しくなく、国民の不安や懸念につながっている。 中国政治を研究するカナダ・トロント大学のリネット・オン教授はAFP通信に、一連の事件が「たくさんの不満や鬱憤(うっぷん)がたまっている社会の症状」で、「諦める人もいれば、腹を立てたら復讐しようとする人もいる」のだと話した。 経済の失速、若年層の高い失業率、不動産危機による貯金の減少などが、中国の人たちの将来への不安悪化につながっている。 習近平・国家主席は各地の地元当局に、地域社会の「社会的安定」と安全を維持し、「極端な事件を厳しく防ぐ」ため、必要な措置をとるよう命令している。 こうした状況で各地の当局は素早い対応をとっていると、広く示そうとしている。ただし、1年間でこれほど大勢の死傷者が出たことから、中国社会が安全なのかどうか疑問を呼び、さらに国民を不安にし、観光に影響をもたらすのではないかと懸念されている。 中国共産党は近年、各地で市街地の監視体制を強化してきた。それに加えて、11日夜の珠海での事件を受けて、世情不安を防ぐための対応を各地で強化するよう指示が出ている。 (英語記事 Car driven into crowd outside primary school in China)
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