「クリーン・クライミング・イン小川山」に参加して|筆とまなざし#393
小川山でクライミングを楽しむことのできる環境を維持するために皆で考え、行動しよう。
1週間ぶりの小川山はすっかり涼しくなっていた。いや、やっと秋らしい気候になったというべきだろう。とにかく今年の9月は暑かった。11日間の滞在のあと、1週間後に小川山へやってきたのは、週末に企画されている「クリーン・クライミング・イン小川山」にブース出店をするためである。せっかくなので数日前から小川山入り、土曜日のイベントに備えた。 「クリーン・クライミング・イン小川山」は2000年に始まり、今年でなんと25年目。四半世紀続くクライミングイベントはほかに例がない。2000年といえば世界的なボルダリングブームが巻き起こり、小川山にクライマーが戻ってきたころである。80年代初頭、小川山は日本のフリークライミング黎明期にそのメッカとなったが、やがてトレンドはクラックから前傾壁のボルトルートとなり、傾斜がなくクラックの多い小川山に訪れるクライマーは少なくなった。やがて、クリス・シャーマら若手のカリスマクライマーの登場により90年代末に世界的なボルダリングブームが沸き起こる。その火付け役ともなったのが、クリスらが北米のボルダーを登りまくるロードムービー「Rampage」。当時高校生だったぼくもその影響を多大に受けたひとりである。そして日本のボルダリングシーンで脚光を浴びたのが奥多摩の御岳や小川山のボルダーだったのである。 「クリーン・クライミング・イン小川山」では、各々がクライミングを楽しみながら岩場やアプローチで清掃活動を行なうほか、ファーストエイド講習や著名クライマーのトークなどさまざまなコンテンツが行なわれる。これからも小川山でクライミングを楽しむことのできる環境を維持するために皆で考え、行動しようというのが主な趣旨である。地元の方々、ほかのクライマーとの交流も大切にされている。 今年のイベントでは、自身もクライマーで国際認定山岳医の稲田千秋さんのファーストエイド講習や、話題のブレーキアシスト機能付きビレイディバイスの3社3モデル合同体験会、そして友人であり山梨学院大学で教鞭を取る小池先生の環境についてのお話が行なわれた。ファーストエイド講習はクライマーに則した具体的な内容なのがすばらしく、ビレイディバイスの体験は実際に比べて使用することでそれぞれの特徴がよくわかった。競合製品にもかかわらず各メーカー担当者がクライマーのために尽力してくれたのがありがたい。小池先生のお話も小川山という身近なフィールドからゴミ、とくにマイクロプラスチックについて考えるきっかけとなった。 さて、ブース出店していたブルーアイスで試着したハーネスが非常にすばらしく……その話はまた別の機会に。とにかくどのコンテンツも内容が濃く非常に充実、多くの気づきを得ることができた「クリーン・クライミング・イン小川山」。「クライム・オン!! 」とは趣旨が違えどどちらも素敵なイベントだ。また来年の参加が楽しみである。
PEAKS編集部