中国、経済協力てこにグローバルサウスへ影響力 一方的な現状変更正当化 防衛研報告書
防衛省のシンクタンク、防衛研究所は17日、中国の安全保障政策の動向などを分析した年次報告書「中国安全保障レポート2025」を公表した。中国が経済協力をてこに中東やアフリカのグローバルサウス(GS、南半球を中心とする新興・途上国)への影響力を増していると指摘。台湾や海洋権益など「核心的利益」を守るため、GSへの外交攻勢で一方的な現状変更の試みを正当化しようとしていると分析した。 報告書のテーマは「台頭するグローバルサウスと中国」。報告書は、中国は中東やアフリカの多くの国にとり最大の貿易相手国であり、中国もGSに積極的な投資活動を行っていると指摘。このためGSが「経済的圧力を恐れて自ら中国の政策志向に従うことが考えられる」との見方を示した。 中国が習近平政権下で軍事的関与も強めていると強調。2017年、アフリカ東部ジブチで海軍基地の運用を始めて以降、「中東・アフリカ地域における中国海軍のプレゼンスが恒常的なものになった」とし、中国企業による港湾開発も「将来的な軍事利用が指摘されている」と警鐘を鳴らした。 中東では、非エネルギー分野で経済関係を深化させる一方、伝統的に米国との結び付きの強い軍事面でもドローン輸出などで進出を図っていると解説した。アラブ首長国連邦(UAE)やオマーンでの中国軍施設建設の可能性にも触れた。 中国による安保分野でのアフリカへの関与は、米国やフランスなどと比べて規模は小さいものの、武器輸出や軍の訓練・教育、政治学校の設立など多角化している点を強調した。 中国とGSは関係を深める一方、「その持続性は不透明」とした。中国に対抗し「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指す日本などは「GSのニーズに合わせた長期的な信頼に基づくパートナーシップの発展が必要」と結論付けた。