「だから、私は山へ行く」#26 安藤真由子さん
「だから、私は山へ行く」#26 安藤真由子さん
山を愛し、山とともに生きる人に迫る連載「だから、私は山へ行く」。今回は、低酸素トレーナーや登山ガイドとして多くの人の山歩きをサポートするかたわら時間をつくってはテント泊縦走やクライミングを楽しむ安藤真由子さん。自分の“好き”を大切に生きてきた彼女が、山を愛する理由とは。
幼い頃から近くにあった山が〝好き〞
「やっぱり好き〞なんですよね」。 山へ行く理由を尋ねると、安藤真由子さんは少し考えてから、そう教えてくれた。シンプルで、ゆるぎのない答え。もちろん、その言葉のうしろにはたくさんの理由があるに違いない。けれど、突き詰めれば、結局は好き〞に行き着く。それはきっと、山を愛する人ならだれもがもつ思いだろう。 福岡県宇美町。標高936mの三郡山さんぐんさんのふもとで生まれ育った安藤さんにとって、山は幼いころから身近な存在だったという。 「父も母も山登りをしていたので、家には山道具がありましたし、小学校時代には三郡山や宝満山にみんなで登る鍛錬遠足〞があったので、『山は登るもの』という感覚はありました。ただ、それが山好きになったきっかけかというと、ぜんぜんそんなことはなくって。当時は、ふつうの生活のなかにときどき山がある感じでした」。 幼いころから体を動かすことが大好きで、屋根に登ったり、崖から飛び降りたり……。「近所の人が心配して母に通報するほど、じっとしていられない子どもだった」という安藤さんは、中学校で陸上部に入部。同部の顧問の先生の勧めで高校からトライアスロンを始め、競技に打ち込むようになる。 高校、短大時代にトライアスロンを続けていた安藤さんは、「もっと競技を続けたい」という思いから鹿児島の鹿屋体育大学に編入。しかし、水泳を苦手としていたこともあって、なかなか芽が出なかった。そこで得意としていた自転車競技に転向すると、めきめきと頭角を表し、2003年には自転車競技の日本代表としてワールドカップオーストラリア大会に出場するほどになる。