【珍地名】長泉町・「鮎壺」に別の読み方が! 江戸時代の僧が書いたロマンチックな詩が由来
以前も静岡・長泉町にある鮎壺(あゆつぼ)の地名の由来について調査しましたが、実は別の呼び方や由来が浮上しました。地元に長く住む人が知っていたその別名と由来を、追加調査しました。 【関連記事】珍地名を調査! こんな所にアユいる? 住宅地の「鮎壺」かつてはアユが“たまっていた”らしい
復習! 鮎壺の由来は「アユがたまる滝壺」
「鮎壺」という地名を以前調べた際には、下土狩駅近くにある「鮎壺の滝」が、地名の発祥だと判明しました。昔、この滝にはたくさんのアユが遡上し、滝を乗り越えられず、滝つぼにたまったことから「鮎壺の滝」と名付けられ、それが地名になりました。 ただ、実は別の呼び方や由来があるそうなのです。漢字を見ると、どう考えても読み方は「あゆつぼ」ですが、別の呼び名とはいったい。まずは聞き込み調査です。
地元の住民に聞き込み
地元の方に鮎壺の別名を聞いてみました。「あゆつぼ」以外の呼び方を聞いたことはありますか? 「聞いたことないですね」 「あゆつぼですね、それかただ『滝』と言っちゃうね」 地元の人にもあまり知られていないのでしょうか。別の呼び方は本当に存在するのかと思えてきたその時、有力な情報を持つ住民に出会いました。 住民の男性: 「あいつぼ地区」に住んでいます。「あいつぼ」です 別の読み方に「あいつぼ」が浮上。男性によると近くにある踏切の名前も「あいつぼ踏切」だということです。しかし漢字は「鮎壺」ではなく「藍壺」。いったいどういうことなのでしょうか。男性が教えてくれた踏切に向かいました。
「藍壺」踏切があった
それは鮎壺の滝の北東にある、JR御殿場線の踏切です。すぐ近くにある信号機の表記は「鮎壺」ですが、踏切の表記は「藍壺」になっています。同じ地域に漢字も読み方も違う2つの呼び名が存在していました。 ということで以前も情報をくれた、ながいずみ観光交流協会に真相を聞きに向かいました。すると鮎壺・藍壺、2つの地名に隠された驚くべき歴史があったんです。
鮎壺も藍壺も当て字
ながいずみ観光協会の観光ガイド・佐久間千佳さんは、以前「鮎壺」の名前の由来が、滝に多くのアユがたまっていたことだと教えてくれた人物です。その時は、「藍壺(あいつぼ)」の話はしていなかったのですが。 ながいずみ観光協会・佐久間千佳さん: 長く住んでいる人は「あいつぼ」と呼びますね。その事実にたどり着いてくれるのをお待ちしていました。実は深い歴史があるんですよ! 前回教えてもらいたかったのは山々ですが、とにかく佐久間さんの説明を聞いてみましょう。佐久間さんによると「鮎壺」も「藍壺」両方とも当て字です。長泉町の歴史を記した長泉町史では、「鮎壺」のフリガナが「あいつぼ」になっています。 【長泉町史】 鮎壺(あいつぼ) 藍壺と書かれることもあるが、鮎も藍もあて字であることに変わりはない。 もともとは平仮名で「あいつぼ」でした。「あい」には、低くえぐれた河床などという意味もあるそうです。 ながいずみ観光協会・佐久間千佳さん 平仮名だった「あいつぼ」に、後にいろいろな意味合いが出てきて漢字の当て字が使われるようになったそうです。
美しい滝壺に感動した白隠禅師の詩
藍色の「藍」が使われたのは、江戸時代の書物が由来です。江戸中期に禅を広めた僧侶で、沼津市の松蔭寺で住職を務めた白隠禅師が記した書物が残っています。その中に、白隠禅師が鮎壺の滝に来た時に記した詩があります。 ながいずみ観光協会・佐久間千佳さん: 「海の水が青いのは、この水が流れ込んでいるからだ」というロマンチックな詩です つまり藍壺の藍は、滝壺の水が美しい藍色に見えたことから「藍」の字が使われるようになりました。その後に、アユが滝壺にたまっていたことから「鮎壺」という名前も生まれたと考えられています。 鮎壺の歴史をさらに深掘りすると、江戸時代の僧侶のロマンチックな詩に行き着きました!
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