米国人はなぜヤード・ポンド法を「好む」のか、実は国はずっとメートル法を推奨
「帝国単位」を採用している国は世界で3カ国だけ、メートル法が定着しない本当の理由とは
米国、ミャンマー、リベリアの共通点をご存じだろうか。「この3カ国には恥ずかしい類似点がある」とメートル法支持者は主張する。メートル、グラム、キロメートルではなく、フィート、ポンド、マイルという帝国単位(ヤード・ポンド法)を使用しているのだ。 ギャラリー:フランス革命はいかにしてメートル法を生んだか 写真7点 しかし、実は、話はもっとややこしい。米国ではフィートやポンドといった単位が広く使われているが、実際に国が推奨しているのはメートル法だ。 では、なぜ米国人はメートル法を使わないのか? メートル法の発展の歴史と、なかなか日常生活に定着しない理由を見ていこう。
実は推奨されていた
まずはこんな事実から。「米国では1866年にメートル法の使用は法制化されています」と、度量衡の標準を管理する米国国立標準技術研究所(NIST)の連邦メートル法プログラムを主導するエリザベス・ベンハム氏は言う。 実際に、1970年代以降、貿易や商取引においては、メートル法(国際単位系、SI)を国として推奨する方針を政府は示してきた。しかし、使用は任意で、一律的な制度とはせずに産業界や個人にSIの使用をやんわりと促す程度だったために、普及に1世紀以上も費やす結果となっている。
混とんから始まったメートル法
事の難しさは、度量衡にまつわる混とんとした歴史からも見て取れる。メートル法の起源はフランス革命にさかのぼる。18世紀後半の啓蒙思想の時代、フランス人は、国を襲った政治的混乱の中に、ある大きなチャンスを見いだした。その頃のフランスには膨大な数の計量単位が存在し、国内だけでも25万種類もの単位が使われていた。 フランス以外でも、国ごとに、さらには同じ国でも地域ごとに独自の計量単位があった。世界共通で一定の決まりに基づく国際基準を夢見る科学者にとっては、悪夢としかいいようがない状況だ。 新たな体系づくりを任されたフランス科学アカデミーは、その基準となる尺度を、パリから測定した「北極から赤道までの距離の1000万分の1の長さ」と決めた。これを1メートルとし、著名な科学者らによって苦労の末に文書にまとめられ、以後すべての度量衡の基礎となった。例えば、1ミリリットルは1立方センチメートルの水の体積、というように。