圧巻トライ!サントリーのW杯戦士、松島幸太朗はなぜフランス一部クレルモンへの移籍を決意したのか?
パスを受けた瞬間にサントリーサンゴリアスのフルバック、松島幸太朗はトライまでの青写真を描いていた。目の前に身長190cm、体重100kgの屈強なセンター、ティム・オマリーと202cm、120kgの巨漢ロック、サナイラ・ワクァが立ちはだかっても、まったく怯むことはなかった。 「あの場面は勝負する、自分の仕事を100パーセントやり切る、という気持ちでいったので」 大阪・万博記念競技場でNECグリーンロケッツと対峙した、1日のトップリーグ2020第4節。1トライ1ゴールを返され、19-7と追い上げられた直後の後半20分に、松島が待ち焦がれてきた瞬間が訪れた。開幕から4試合目で決めた今シーズン初のトライ。きっかけを作ったのも松島だった。 NECのハイパントを自陣のほぼ中央でキャッチすると、そのまま縦へ駆けあがる。敵陣へ侵入したところで2人がかりのタックルで止められるもボールを失わず、フォローしてきたフランカーの小澤直輝へ完璧なオフロードパスを一閃。22メートルライン手前までのビッグゲインを演出する。 そして、ラックからスクラムハーフのリチャード・ジャッド、センターの田村煕を介して、すぐに起き上がってラインに入っていた松島へパスが回ってきた。右タッチライン際で余っていたウイング、塚本健太をケアしていたからか。このとき、ワクァは半身の体勢で松島と対峙していた。 状況を見越した松島は加速する前に、左右へ細かいステップを踏む。突っ込んでくるのか。塚本へパスを出すのか。的が絞れないオマリーとワクァがたまらず体勢を崩す。次の瞬間、昨秋のワールドカップ日本大会で「フェラーリ」と形容された、爆発的なスピードで2人の間へ割って入った。 絶妙な緩急の前にオマリーはなす術なく置き去りにされ、ジャージーをつかもうとしたワクァの右手も振りほどかれる。カバーしてきたウイングの宮島裕之も止められない。速さだけではない。巧さと力強さ、しなやかさを融合させた突破で、約30メートル先のインゴールを楽々と陥れた。 「やっとトライを取れた、という感じですね。5ポイントを取る、という目標を達成したことを喜びたいのと、先週の試合に続いて安定性のないところがあったので、そこはしっかりと修正したい」