鈴木砂羽さん(52歳)『愛の新世界』での大胆デビュー秘話…「大胆不敵な新人なんて言われましたが」|美ST
“大胆不適な新人”と世間から言われ、実際、怖いものなんて何もないと思っていました
『愛の新世界』のオーディションに落ちたら、故郷の浜松に帰って大学に入り直し、美術教師になるための教職免許を取って、趣味の漫画を描きながら生きていくのもアリだなぁ、なんてふんわりと思っていました。ですが受かってしまい……。父は「アラーキー? 高橋伴明? すごいじゃないか!」と興奮した様子だったのですが、母は不安で「どうしよう」とうろたえるばかり。 そんな母を尻目に、「やるっきゃない!」と勢いだけで本格的にこの世界に入りました。撮影はとにかく楽しくて、まさに水を得た魚。「ああ、やっぱりこれがしたかったんだ」と確信しました。センセーショナルな作品で初主演をしたためか、「大胆不敵な新人」とか「生意気」なんて言われたものです。若かったし、実際、怖いものなんてないと思っていました。 そう言うと人の意見や物差しに左右されることなく、ストレスフリーに邁進できたかのようですが、全くそんなことはありません。 特に母の価値観や、母が持つアイデンティティに思えば40代後半になるまでずっと囚われてしまっていました。 母が求める私の理想像と実際の私の乖離に苦しんだし、「こんな私だと、ママはよく思わないかな?」と自分に制限をかけていたことも。それでいて、何かに失敗すると「どうしよう。こんなんだからうまくいかない。ママに言われていたことも上手くできなかった…」。 母に認めてもらうことばかり考えて、自分で自分を認めることができなかった。だからいつも満たされなくて、自分を責めてばかりいたように思います。 でもよくよく思い返してみれば、母は別段私に強制なんかしていないんですよね。なのに私がいつまでも「ママが言うから。ママは絶対!」と信じ切っていました。ほとんどママ信者です。 でもそれほど私と母の絆は強固なものだったようです。 「私は私でいい」と本心から思えるようになったのは、50代に入った最近のこと。やっと自分の生き方に自分でOKを出せるほど、私の大人への道のりは長かったです。とはいえ今でも母とは大ゲンカします。この前も、私が東京の荷物を実家にバンバン送っていたら「ウチはゴミ箱じゃない!」と怒鳴られ、「わかりました!捨てに行きます!」と怒鳴り返して。やっぱり、私はまだまだですね(笑)。 《衣装協力》 ブラウス¥40,700 パンツ¥36,300(すべてミュラー オブ ヨシオクボ) ピアス【左耳】¥99,000 ブレスレット¥594,000 ハンドカフ¥33,000(すべてカラットアー/ヴァガス)ブーツ¥83,600 撮影/鈴木章太 ヘア・メイク/加藤峰子 スタイリスト/平井律子 取材/キッカワ皆樹 編集/根橋明日美