鈴木砂羽さん(52歳)『愛の新世界』での大胆デビュー秘話…「大胆不敵な新人なんて言われましたが」|美ST
ミーハー心丸出しで入団した文学座は、私にとっては武者修行のようでした
高校を卒業後は美大に進んだのですが、やはり女優になることを諦め切れずに途中で退学。それからはいろいろな事務所の養成所や劇団を調べる日々でしたが、最終的に文学座に決めました。理由は本当にミーハーなんですが、好きな俳優さんを大勢輩出していたからです。松田優作さんや桃井かおりさん、樋口可南子さんたちですね。 試験対策? いや、全く(笑)。もう裸一貫です。当時の私は何も持っていなかったし、披露できるものは“私という存在”しかありませんでした。何を対策したところで、何もない私しか出すことはできなかったんです。今思うと怖いもの知らずだなぁと思いますけどね。それから本当に運良く試験をパスして文学座の研究生になりましたが、そこには私と似たような志の人たちがたくさんいて。若さと活気に溢れた、ひたすらに楽しい時代でした。 「文学座を志望したのはミーハー心から」と言いましたが、実はもう一つ理由があります。それは母を安心させたかったから。いや、認められたかったからというほうが近いかな。よくわからない劇団より「文学座」ならブランド力があるかな、と本気で思っていました。 そういうのって、もし失敗した時のための言い訳の予防線なんですよね。でも当時は、ほとんど無意識にそうしていました。そしてそのことに気づいたのはごく最近のことです。もしかしたら私に限らず、誰か、特に母と言う存在に囚われている人は多いのかもしれませんね。
映画『愛の新世界』で初主演。大胆なヌード披露にもあまり抵抗はなかったけれど…
初主演となった『愛の新世界』に出演したのは文学座の研究所を卒業した、20歳そこそこの頃です。島本慶さんのエッセイと荒木経惟さんの写真を融合させた写真集が原作で、監督は高橋伴明さん。ビッグネーム揃いで、ここでも「これなら認めてもらえるかな?」とどこかで思っていました。今で言う「承認欲求」でしょうか。でも、素直にチャレンジしたいという気概もありました。 当然反対されると思ったので、オーディションを受けることは両親には黙っていたんです。受かるかわからなかったし、何より出演の条件でヌードがマスト。私自身はヌードになることにあまり抵抗はなかったんですけどね。もともと美術家系でしたし、ヌード=裸体は日常にありました。 むしろ「私の体型ってトルソーみたいにガッチリしているけどいいのかな?」と思っていました。 そしてこれまた運よくオーディションを順調に勝ち進み、最終審査の手前で会場にあった公衆電話で家に電話をして、母に申告。「これから最終審査。ヌード審査らしい」と。電話口での母の叫び声は忘れられないですね。「あ! 今呼ばれたから!」と言って急いで電話を切りました(笑)。