大正ロマンの代名詞・竹久夢二の見ていた東京を追体験。日本橋・三越、銀座・歌舞伎座…「竹久夢二が描いた大正時代の東京と女性たち」【生誕140年】
【お茶の水】ニコライ堂夢二と恋人の彦乃(右)。仲を反対されていた2人が、ひそかに結婚式をあげた時の様子が描かれている。下は関東大震災前のニコライ堂のスケッチ。 また、夢二は、当時珍しかった海外のファッション誌も参考にしていたようです。流行の最先端となった夢二の絵やデザインは、女性たちの憧れの的に。 三越に絵を持ちこみ、「これと同じように着物を染めてほしい」とオーダーする人もいたとか。夢二がデザインする雑貨を販売していた「港屋絵草紙店」には、女学生や、プレゼントを買い求める男性も多く訪れました。
【銀座】歌舞伎座「物心ついてからずっと東京に住んだ私にとっては、一片の東京地図は、実に有機的な私の人文科学史です」 <竹久夢二「東京地図」より(『婦人公論』)1924年5月号> 夢二は、元妻の岸他万喜(たまき)(写真右)と日本橋に「港屋絵草紙店」を開業。夢二がデザインする品々を販売した。文化人も訪れるサロンのような場だったという。夢二のイラストをモチーフにした雑貨は、竹久夢二美術館で今も購入できる。
【日本橋】三越本店【銀座】銀座千疋屋◆ゆかりの名店でかつての風景を追体験 彼の日記には、訪れた店や名所などについての記述がよく出てきます。飲食店では味だけでなく、店の佇まいや調度品などにも注目していたようです。 千代紙の「菊寿堂いせ辰」や、和紙製品の老舗「榛原(はいばら)」で商品のデザインをしたり、銀座千疋屋の広報誌『fruit』や日本橋三越が手掛けていた雑誌『三越』の表紙絵を描くなど、名だたる名店と仕事のつきあいがありました。
【谷中】菊寿堂いせ辰【銀座】山野楽器そんな夢二の見ていた風景を追体験しながら、東京を楽しむことができるガイドブック『夢二の東京さんぽ手帖』をこのたび上梓します。 当時の写真や絵葉書を多数収録し、夢二の日記や文章を読み解くことで、令和と大正ロマンの時代を結びました。本書を参考にしながらゆかりの名店や街に足を運び、夢二目線で東京を歩いてみてはいかがでしょうか。
石川桂子