国学院大がつなぐ“歴史のタスキ”とは 前田監督「物語としては出来過ぎ君」出雲駅伝2回目V
大学駅伝シーズンが開幕した。14日に行われた出雲全日本大学選抜駅伝は、国学院大が5年ぶり2回目の優勝を果たした。5区で先頭に立つと、最終6区では駒大との一騎打ちに。初マラソンとなった2月の大阪で優勝を果たした平林清澄主将(4年)が区間賞の走りでけん引した。国学院大の逆転Vを演出した歴史の“タスキ”をひもとく。 かつて憧れた情景を、自身の足で再現した。最終6区、平林は駒大エース・篠原倖太朗(4年)と先頭を争っていた。1万メートルの自己ベストは約20秒劣っている。ただ、冷静さでは分があった。「ラストスパートには持ち込みたくない。ロングスパートは考えていた」。駆け引きは、得意のアップダウンで仕掛け、5年ぶりの優勝をつかみ取った。 不思議な縁が絡まった大会だった。2021年に国学院大に入学した理由は、19年大会の初優勝を見て「鳥肌が立った」からだった。当時は最終6区で37秒差の4位スタートだったが、主将の土方英和(当時4年、現旭化成)の激走で大逆転した。 20年の箱根駅伝はエース浦野雄平(当時4年、現富士通)との二枚看板として挑み、過去最高の総合3位。「土台はしっかりと作れたかな」と笑って卒業した土方は、今では頼りになるOBの立場だ。 レース前「これで優勝したらドラマだな」と連絡を受けた平林は「ドラマ、つくってきます!」と宣言。「最後の最後、本当に再現ドラマのような走りができた。憧れのままで終わらせずに、しっかりとした走りができた」と達成感にあふれ「これを見て憧れる高校生がいてくれたら」と会心の笑顔をのぞかせた。 さらに、縁は深く絡まっている。2度の出雲優勝は、どちらも前田監督の母校・駒大が2位。指揮官も「いや~、すばらしい。漫画みたいにすごいよ。4年前に憧れた少年が駒沢、横綱相手に…」と少年漫画のような逆転優勝に感極まった。「無名だったうちの大学に興味を持ってくれて…。ちょっと物語としては出来過ぎ君です」と褒めちぎった。 指揮官が「駅伝は何年もかけたものがつながっている」というように、それぞれの記憶と思いがこもった“タスキ”は大学を超えても存在する。かつて前田監督を指導した駒大の大八木総監督は、平林に「おまえは今日は強かった」と最大限の賛辞を贈った。「ありがとうございます」。主役は笑顔で一礼。互いに敬意を払った場面だったが、絡まった視線では、平林は「次も勝つ」、大八木総監督は「次は勝つ」とやり取りしていたように見えた。 今季のチームスローガンは「歴史を変える挑戦~EP.3~」。土方世代をはじめ、歴史をつくってきた先輩を過去のエピソードとして数えつつ、初の箱根総合優勝を目指す。その前に11月3日の全日本大学駅伝が待つ。「しっかりチャンスをつかみたい」と平林主将。連続で主演を務め、新たな歴史を創造する。(デイリースポーツ・田中亜実)