「水口かんぴょう」歴史400年 浮世絵の風景、連綿と
滋賀県甲賀市水口町の「水口(みなくち)かんぴょう」が、原料となるユウガオの収穫と加工の最盛期を迎えている。国の地理的表示(GI)保護制度に登録されて初めてのシーズン到来に、生産者は、その魅力を引き出そうと、張り切っている。 【動画】細く長~く。専用の機械で帯状にしたユウガオを天日干しする 「良いかんぴょうを作るには、強い日差しと、程よい風が大切」と話すのは、ユウガオを3アール栽培する生産者で、古民家カフェ「一里塚」を経営する長隆義さん(68)。 長さんは、2日に1度、朝早くから、重さ10キロほどの実を6、7玉選んで収穫。専用の機械で、幅3センチ、厚さ3ミリ、長さ3メートルほどの帯状に仕上げる。 これを切れないよう丁寧にさおにかけ、天日干しする。水口かんぴょうの特徴である柔らかさを引き出すためには、20%以下の水分量に仕上げることがポイントだ。干す目安は、晴れた日で1日半から2日。手の感触で乾き具合が分かるという。
広重「東海道五十三次」にも
同地域はかんぴょう発祥の地ともいわれ、400年に及ぶ生産の歴史を持ち、江戸時代の浮世絵師、歌川広重の「東海道五十三次」にも干す様子が描かれている。祭りや祝い事の席には欠かせない食材として、地域に根付いている。 現在は、水口かんぴょう部会の農家14人が60アールでユウガオを栽培。在来種から選抜し、自家採種したユウガオだけを原料に使う。昔ながらの天日干しが今も受け継がれ、8月下旬まで収穫と加工作業に追われる。今年の生産量は、140キロを見込む。 長さんは、自身の古民家カフェで提供する洋食のランチメニューにも、かんぴょう巻きを添える。「名物は何かと聞かれたら、胸を張ってかんぴょうと答えたい」とし、今後はかんぴょうを使ったメニューを増やして、魅力をアピールしていきたいと考えている。 (福本卓郎)
日本農業新聞