3年連続・山本由伸はドジャースに去り…沢村賞とサイ・ヤング賞の決定的違い「そもそも選考基準なし」現代指標で“受賞に値する3投手”は?
2024年の沢村賞は「該当者なし」となった。先発投手の役割と考え方が急速に変化する中で、成績などから見た選考基準について考察する。〈全2回〉 【貴重写真】「わ、わかい…」由伸18歳、高校の制服姿がカワイイ。大谷17歳、細いのに甲子園で衝撃の特大HR。ガリガリな柳田、ヤンチャそうな学ラン姿の張本…名選手160人超の高校時代を見る
「球速が上がった」ことで故障のリスクは高まる
野球を統計学的な観点で分析、評価する「セイバーメトリクス」は考案されて半世紀を越えた。日本では未だに定着したとは言い難いが、セイバーの考え方では、沢村賞の選考基準の2項目である「勝利数」「勝率」は、投手の実力とは関係性が薄いとされている。実力がない投手でも、打線の援護があれば勝利数は増え、敗北数は減るからだ。 先発投手の投球回数が、昭和の昔よりも減っているのには諸説ある。その中で最も有力なのは「球速が上がった」ことだろう。 スピードガンで球速を計測できるようになった1980年代に150km/hを投げる投手はほんの数人しかいなかった。しかし現在、160km/h超のフォーシームも珍しくないロッテ佐々木朗希を筆頭に、多くの先発投手の最高球速は155km/hを超えている。「速い球を投げる=投球強度を上げる」ことであり、故障のリスクが高まる。 だから指揮官は投手の球数に敏感にならざるを得ず、好投していても100球をめどに降板させることになる。100球は6回~7回だから完投は難しい。 現代野球の登板間隔は「中6日」が一般的になっている。このために先発投手の登板数は24~26試合となる。「イニング数×登板数」として考えると、先発投手のシーズン投球回数は144回から182回となり、200回には届かない計算となる。 〈中6日は、登板間隔としてあまりにも広すぎる。MLBでは中4日、100球が一般的になっている。日本でも可能なはずだ〉 このような意見がある。これは議論の余地があると思うが、それにしても「昭和の昔」に戻ることなど考えられない。
サイ・ヤング賞の選考とどう違うのか
では、MLBでシーズン最高の投手に与えられるサイ・ヤング賞の選考方法はどのように変わってきたのか。 サイ・ヤング賞は設立当初は両リーグから1人選出されていたが、1967年から両リーグで1人ずつ選ばれるようになった。当初は沢村賞と同じく先発投手が選ばれてきたが、1974年ドジャースのマイク・マーシャル(106登板15勝12敗21セーブ)が救援投手として初めて受賞した。以後、ヤンキースのスパーキー・ライル、カブスのブルース・スーター、ドジャースのエリック・ガニエなど時代を代表する救援投手が受賞している。 強調したいのは、選考基準が設けられていない点である。 かつては「最多勝」「防御率1位」といった個人タイトルを受賞した投手が選ばれることが多かった。しかし今ではそうした従来の評価ではなく、セイバーメトリクスの総合指標で、大谷翔平らMVP選考の際にも話題となるWAR(Wins Above Replacement)が最重要視される。たとえば2018年ナ・リーグは10勝9敗のメッツ、ジェイコブ・デグロムが受賞、デグロムは翌年も11勝8敗で連続受賞している。