糖質だらけのおせち料理や飲み物にどう向き合うか?【正月は体に悪い】#3
【正月は体に悪い】#3 おせち料理中心のお正月は糖質過多になりがちだが、1日あたりの糖質の摂取の目安をご存じだろうか? 性別、年齢、体重、日々の身体活動量によって異なるが、「日本人の食事摂取基準」(2020年度版)によると、1日のエネルギー量の50~60%を炭水化物から取るのが望ましいとされている。 「肥満」を防ぐ食生活が心臓を守り健康寿命を延ばす理由 具体的には、50~64歳で、3段階の真ん中である普通クラスの身体活動量の男性なら、1日当たり2600キロカロリー、女性なら1950キロカロリーが必要となる。65~74歳なら、それぞれ2400キロカロリー、1850キロカロリーで、75歳以上なら2100キロカロリーと1650キロカロリーだ。 これを糖質量で表すと、50~64歳の男性は304~369g、女性は226~275g、65~74歳ならそれぞれ280~340g、214~261g、75歳以上なら244~296g、190~232gとなる。1日3食なら1食当たりの目安は50~64歳男性で101~123gという計算だ。 一方、おせち料理の糖質はどうか? こちらも地域や家庭によって味付け等はさまざまだが、栗きんとん(50g)約26g、伊達巻2切れ約11g、黒豆約11g、田作り(30g)や昆布巻きは1つで約8~9g含まれるものもある。お正月に欠かせない切り餅は1つ(54g)で27.4gといったところか。 お酒の糖質もばかにならない。種類にもよるが、日本酒はおちょこ1杯で約0.9gと言われている。最近はお酒を飲まずにソフトドリンクで酒席を過ごす人も多いが、市販のオレンジジュース200ミリリットルで糖質20g以上ある。 つまり、人によってはお餅が2つ入ったお雑煮に栗きんとん、伊達巻、黒豆、田作り、昆布巻きなどを一通り食べつつ、お酒やソフトドリンクを飲み続けると、1食あたりの糖質量の目安を軽くオーバーする可能性がある。 糖質だらけの料理や飲み物にどう向き合ったらいいのか? 愛国学園短期大学准教授の古谷彰子氏が言う。 「糖質は体にとって重要なエネルギー源ですし、おせち料理は日本の大切な伝統文化です。これを敬遠する必要はありません。その魅力を楽しみつつ、食べる工夫をすることが大切です」 例えば活動量が普通の50~64歳男性の場合(1食当たりの糖質量101~123g)は、1食当たり栗きんとん、伊達巻2切れ、黒豆(20g)、昆布巻き(1本)、切り餅1個くらいにとどめればいい。これなら、糖質は84g強で済む。田作り(30g)を食べても糖質の1食当たりの目安の範囲内だ。 50~64歳女性(1食当たりの糖質量75~92g)は、栗きんとん、伊達巻(2切れ)、黒豆(20g)、切り餅1個で75g強となる。お酒やソフトドリンクも飲むという場合は昆布巻きや田作りを控えるというやり方もある。 「これはあくまでも目安で、健康な人は神経質になる必要はありません。多めに糖質を摂っても代謝され血糖値は戻ります。注意したいのは一度血糖コントロールを乱すと元に戻りにくい糖尿病やその予備軍の人です。こういう人は食べる時間も注意しましょう。特に夜間に多くの糖質を摂ると、血糖値が高い状態が続きやすく、結果的に脂肪の蓄積や睡眠の質の低下につながります。気をつけましょう」 体は昼間に活動し、夜間に休息するよう設計されている。この体内リズムを支える「体内時計」は、食事のタイミングにも影響を受ける。 「夜間に糖質を多く摂ると、血糖値が急上昇し、インスリンの分泌が活発になります。その結果、脂肪が蓄積しやすくなります。また、夜に糖質を摂りすぎると、睡眠の質が低下することも分かっています。睡眠中は代謝が低下するため、血糖値がなかなか下がらず、結果として体の回復機能にも悪影響を及ぼす可能性があります」 おせち料理を楽しむ際には、「いつ、なにを食べるか」を意識することも重要だという。 「甘みの強い黒豆や栗きんとんは、朝や昼のエネルギー補給に適しています。一方、夜に食べる場合は少量にとどめ、野菜などと一緒に摂ることで血糖値の上昇を緩やかにすることができます。また、お正月の間に体重が増えてしまう理由のひとつに、糖質過多があります。糖質の摂りすぎは血糖値の急激な変化を招き、疲労感や集中力の低下を引き起こします。この状態を『糖質疲労』ということがあります。いくら朝と昼に食べて良いといえども、食べ過ぎに気をつけることが大切。大皿料理を小皿に取り分けながら食べるのではなく、1回分の喫食量を盛り付けてしまった後に召し上がるのも、食べ過ぎ防止のコツになります」 糖質が急に吸収されないよう、食べ合わせなどにも気を配りたい。 「例えば、餅を食べる際には一度にたくさん食べず、野菜たっぷりの汁物と組み合わせてバランスを取るのがおすすめです。また、おせち料理を食べるときは、砂糖の量を控えた自家製のものを取り入れたり、市販の糖質カットのおせち料理を利用するのもひとつの方法です。大切なのは、何をどれだけ、そしていつ食べるかを意識することです」