【MLB】ロイヤルズのボビー・ウィットJr.は「MVPを受賞しない最高のシーズン」を過ごしているのか?
今季のア・リーグでは多くの選手が素晴らしい活躍を見せている。ナ・リーグMVPの大本命とみられているのが大谷翔平(ドジャース)だが、データサイト「ベースボール・リファレンス」が算出する総合指標WARを見ると、アーロン・ジャッジ(ヤンキース)、ボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)、ジャレン・デュラン(レッドソックス)、ガナー・ヘンダーソン(オリオールズ)、フアン・ソト(ヤンキース)と実に5人もの選手が大谷を上回っているのだ。しかし、残念ながらMVPを受賞できるのはリーグで1人だけである。 ロイヤルズのボビー・ウィットJr.が月間打率.489で7月の月間MVPに選ばれる 大谷以上の活躍を見せている選手がMVPに選ばれないかもしれない。ア・リーグのそうした状況を受け、米公式サイト「MLB.com」のマイク・ペトリエロ記者は「我々はMVPではない史上最高のシーズンを目撃しているのか?」と題した記事を公開した。今季のア・リーグはジャッジが2年ぶり2度目のMVPを受賞することが確実視されており、ペトリエロ記者は「ウィットJr.が今年のア・リーグMVPに選ばれることはおそらくないだろう」としている。 今季のウィットJr.は141試合に出場して打率.339、30本塁打、97打点、28盗塁、OPS1.004という素晴らしい成績をマーク。遊撃の守備でも質の高いプレーを見せているため、データサイト「ファングラフス」が算出する総合指標WARは9.6を記録している。シーズン終了までに1前後のWARを上積みすることが予想されており、ペトリエロ記者は今季のウィットJr.のWARを10.5と仮定したうえで話を進めている。 ペトリエロ記者によると、BBWAA(全米野球記者協会)による投票でMVPが選ばれるようになった1931年以降、MVPを受賞できなかった選手のなかで10.5を超えるWARを記録した選手は3人(4度)いるという。1931年のベーブ・ルース(10.7)、1934年のルー・ゲーリッグ(10.7)、1941年のテッド・ウィリアムス(11.0)、1943年のウィリアムス(11.5)という顔ぶれだ。近年ではマイク・トラウト(エンゼルス)が2012年から2年連続で10を超えるWARを記録しながらMVPを逃しているが、もしWARが10を超えた選手がMVPを受賞できなければ、トラウト以来ということになる。 また、MVP受賞者がウィットJr.の予想WAR(10.5)を上回ったシーズンは過去に15度しかなく、ウィットJr.は90%以上のシーズンでMVPを受賞できていたという計算になる。56試合連続安打を記録した1941年のジョー・ディマジオ、伝説の「ザ・キャッチ」を見せた1954年のウィリー・メイズ、前人未到の「40-70」を達成した2023年のロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)でさえ、今季のウィットJr.には及ばない。 ペトリエロ記者はこうしたデータの調査を終え、「我々はア・リーグにおいて、史上最高のシーズンの1つ(=ジャッジ)を目撃しているのではない。2つ目撃しているのだ。MVPの賞が1つしかないのは本当に残念だ」と記事を締めくくった。