西参道に「玉川上水旧水路緑道」情報発信拠点 渋谷区、事業内容をPR
渋谷区は12月6日、再整備を進めている都市公園「玉川上水旧水路緑道」内にトレーラーハウス型の情報発信施設(渋谷区代々木3)をオープンした。(シブヤ経済新聞) 【写真】情報発信施設近くに設置するテラドなどのサンプル材 笹塚エリアから新宿駅近くまでの延長約2.6キロ(一部世田谷区内を除く)を再整備する同緑道は、庄右衛門と清右衛門の玉川兄弟が1653年に生活用水を江戸に引くため開削した上水が起源。水路として活用されていたが、1937(昭和12)年に笹塚駅前の一部を除き暗きょ化。1982(昭和57)年~1985(昭和60)年度に、現在の緑道として整備された。 約40年がたち老朽化していることから「整備しないといけないタイミング」と、区は2017(平成29)年度に再整備計画を始動。緑道が身近なものとして親しまれることなどを目的に、構想段階から区民参加型の座談会やワークショップを開き、意見などを募ってきた。その後、プロポーザルを行い「過去の記憶を大切にしながら未来に紡ぐ」という考え方に共感し、建築家の田根剛さんにデザインを依頼した。 コンセプトは、同所の歴史を踏まえ、未来に向けて多様な活動を「育てる・育む」の意味を込めた「FARM」。公園などの憩いの場、広場などの出会いの場、農園など活動・参加ができる場などを作る。緑道は、代々木・西原・初台・大山など6つの緑道で構成。住宅地や商店街に隣接した場所や駅近くなど、それぞれの地域に合わせて、広場やイベントが開催できる空間を整備。公園など、緑道のエリアに合わせて特徴を持たせる。 園路(主動線)にはリサイクル材などで作るオリジナルのテラゾを配置し、住宅環境に配慮した照明も設置。1235本植えられている植栽は樹木医に診断を依頼。約200本が伐採の対象となったが、今ある樹木を生かすため、ついたてを付けたりワイヤなどで横から引っ張ったり、緑道内で移植したりするなどして、伐採は倒木の可能性などがある20本程度に抑える。加えて、本数は未定だが植樹することで「次世代の森を作る」計画。植栽計画はSOLSOが担当する。 緑道内に開いた施設では、再整備のコンセプトやこれまでの経緯、ワークショップに関するパネル、計画段階の模型を展示。同施設の近くには、テラドなどのサンプル材も設置している。区はこれまで、状況に応じて同事業に関する情報をホームページで公開するなどしてきた中、同日には長谷部健渋谷区長と田根さんの対談などの動画も配信する。開放時間は8時~18時(移動が可能なため、設置場所は今後変わる可能性もある)。 同施設のオープンに伴い開かれた会見では、区が事業費などについても説明。事業費は、周辺にビルが建つなど「木々にとっては過酷な状況」である中、現在のアスファルトを外し土を掘り返すなど基礎となる公園工事費が約58.9億円、テラゾなどの材料費が約41.1億円、植栽材料費が約6.7億円、トイレなどの建築費が約6.3億円と約110億円を見込む(デザイン委託料などは除く)。 アスファルトの約10倍になることなど、テラゾの材料費の高さについては、建築費・部材の高騰もありつつ、今後植栽のメンテナンスで8トン級の大型車両が乗り入れられる耐久性、車いすやベビーカーも通行しやすい平坦性、目地を作り雨水が浸水されるようにすることなどを考えて決めたと説明。試作を通した耐久テストもしていることから「50年100年の耐久性がある素材だと理解している」と田根さん。 テラゾには同所の工事で出た廃材の活用も考えているといい、長谷部健渋谷区長は「道に意味や価値、シティープライドが持てるようなことも求めていくには良い方法。都心で暮らす中で環境に対する責任を感じる、プライドを持つ意味でも意味のある素材」と説明。「決して安くないが、50年・100年先を見据えて整備を考えた。区民の意見やいろいろ取り組んだ上で多くの方々で考えていただいたアイデアにしっかり予算を付けて、誇りに思える道にしたい」と続けた。費用を抑える工夫をするほか、都や国の「いろいろな補助金を探している」状況で、一般財源を半分程度に抑えたい考え。田根さんは「時間に投資する、50年分の事業費と考えた時に、出すべきところと長く残るべきため同環境を整えるかを大事にしている」と補足した。 同事業は第1期工事として、8月に笹塚駅前の工事を開始。今月下旬ごろには大山緑道エリアの契約予定などを順次進め、2026年度末までに全区間を着工。2027年度の完成を目指す。
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