「町長室での性被害」 虚偽の告白騒動はなぜ起きたのか? 草津町の現地取材で見えてきたこと
町長室で町長から性被害にあったーー。5年前、草津温泉で有名な群馬県草津町の議員だった女性による告発は、MeToo運動の流れの中で国内外から注目を集めた。 【動画】肉体関係を持ったとされた町長室
しかし、黒岩信忠町長(77)と性的関係を結んだと虚偽の告発をした元町議の女性ら3人に対して、黒岩町長が名誉毀損で訴えた裁判で、前橋地裁は今年4月、女性らに275万円を支払うよう命じる判決を下した。性交渉はなかったと認定し、町長の名誉を毀損したと判断したのだ。 なぜ、こんなことが起きてしまったのか。現地で取材すると、事件に関わった人たちの思惑と事情が見えてきた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●町長は一貫して否定するも高まる批判
当時、草津町の町議会議員だった新井祥子氏(55)が”性被害”を告発したのは2019年11月。 2015年1月8日に町長室で黒岩信忠町長(77)と肉体関係を強いられたという内容だった。 黒岩町長は当初から一貫して否定していたが、草津町で初めて女性議員となっていた新井氏を議会が除名処分にしたことや、その後の住民によるリコール成立で新井氏が解職されたことに相まって、町全体で性被害者を追い詰める「セカンドレイプの町」などと批判する声が高まった。 黒岩町長が名誉毀損で訴えた民事訴訟で新井氏の告白が嘘だったことが明らかになったが、騒動の発端はあまり知られていない。
●告白文書「町長に気持ちが通じた時うれしかった」
最初の”ズレ”は、ライターの飯塚玲児氏(57)がある文書を手にしたことから始まった。 飯塚氏が書いた告発本「草津温泉 漆黒の闇5」(すでに販売打ち切り)によると、飯塚氏はある時、新井氏本人が「令和元(2019)年8月に書いたもの」と語った告白文書を入手したという。 そこには以下のような記述があった(一部を引用)。 <私は草津に来た時からお世話になり、信頼していたG議員に、黒岩町長の悪口を新聞に書く様にや、会話を録音する様にそそのかされ、その様に行っていました> <G議員に言われ、黒岩町長に近づくうちに、黒岩町長を本当に好きになってしまいました> <町長室で2人きりになった時に、私の気持ちが通じた時には本当に嬉しかったです> 飯塚氏はこうした内容が本当であるかを確認するため、2019年9月9日に新井氏にインタビューした。そして、新井氏は文書の内容が事実であると認めたという。