「スーパーボランティア」が見た能登半島の今 地震発生から半年、受け入れたくても受け入れられない被災地の事情とは
珠洲市社会福祉協議会を通じてボランティア活動をする人は、6月上旬時点で1日100~150人ほど。神徳さんは言う。「ボランティアは足りてはいる。これ以上人が来ても、行ってもらえる場所がない。細く長い支援が必要だ」 ▽「したくてもできない」を生んだ事前登録制 制度上の問題で「ボランティアをしたくてもできない」という現象も起きた。 石川県によると現在、能登半島地震の被災地でボランティア活動をする場合、方法は主に三つある。(1)県の特設サイトから事前登録し、バスなどで向かう(2)被災した市町村の社会福祉協議会が運営するボランティアセンターに事前予約し、現地に向かう(3)NPO法人などの活動に参加する―。課題が指摘されたのは(1)だ。 13年ほど前からボランティア活動を始め、珠洲市のボランティアセンターを通じて活動した熊本市の宮成央さんは、県の特設サイトで事前登録し、週に一度公開される募集に5回申し込んだ。ところがいずれも定員オーバーで、6回目まで待たなければならなかった。「これまで行ったところは当日受け付けで、何人でも受け入れるのが通常だった。もどかしさは感じるが、ルールに従うのがいいかなと思った」と振り返る。
県は事前登録制を採用した理由をこう説明する。「発生から半月ほどは、市町村の社会福祉協議会でニーズのマッチングといった受け入れ体制が整わなかったため」。現在は、必要とする人数を県がとりまとめて派遣バスを運行している。まとまった数の団体ボランティアを受け入れている市や町もある。 ▽ボランティアセンターの運営「今回を機に」変革を 「スーパーボランティア」として数々の現場に立ち会ってきた藤野さん。災害時のボランティア受け入れについて、体制の変革が必要だと提案する。「社会福祉協議会に任せるのではなく、市や町が管理するべきだ」。社会福祉協議会は本来、介護事業や障害者福祉の支援に当たっており、それらの業務は災害発生時も続く。能登半島地震でもそうだったように、南海トラフ巨大地震のような災害では、社会福祉協議会の職員も被災者になる。藤野さんは訴えた。「国が『災害庁』を設置するなど、日頃から多くの人でボランティアセンターを運営できる仕組みを作り、備えておく必要がある。今回を機に変わってほしい」