「スーパーボランティア」が見た能登半島の今 地震発生から半年、受け入れたくても受け入れられない被災地の事情とは
能登半島でのボランティア活動の課題として藤野さんが挙げたのが「地理的特徴」だ。特に被害が大きかった珠洲市や輪島市など「奥能登」と呼ばれる地域は半島の先端にあり、陸路のアクセスは南からの一方向に限られる。金沢市から向かう場合、主なルートは二つ。自動車専用道の「能越自動車道・のと里山海道」と、国道249号線だ。石川県道路整備課によると、元日の地震発生以降、この2ルートを含めて県内で最大87カ所が通行止めとなり、奥能登全体が一時孤立状態となった。 道路が復旧した後も、片側通行などに伴う渋滞が続いた。金沢市から本来2時間半程度でたどり着ける珠洲市まで、6時間以上かかる状況だった。県の災害対策ボランティア本部の担当者は本音を漏らした。「そんな中でボランティアの皆さんに『行ってください』とは言えなかった」 6月上旬時点では、金沢市から珠洲市まで、地震前とほぼ同じ所要時間で行けるようになっている。 ▽マッチングを阻む「在宅率」と「気質」
自治体の社会福祉協議会を通じて活動する一般ボランティアは、住民から寄せられる依頼に応じて活動する。藤野さんによると、能登半島地震ではこの「マッチング」に課題が生じ、思うように動けない状況を生み出していた。 珠洲市社会福祉協議会の神徳宏紀さんを悩ませる「住民の在宅率の低さ」もその一つだ。住宅内の片付けを依頼する場合、住民の立ち会いが必要になる。金沢市のように避難先が遠方の場合、立ち会い可能な日程は土日などに限られる。他方でボランティアは平日に活動する人もいる。依頼が届いても、ボランティアを派遣できない状況が続いているという。 神徳さんは、能登半島の人たちの「気質」も影響しているとみている。都市部から離れた環境で自立した生活を送ってきた人たちの多くは、ボランティアへの依頼に抵抗があるというのだ。「個別に訪問して詳しく聞くと『実はこういうことをしてほしい』と打ち明ける住民も多い。依頼用の電話番号を渡しただけではかかってこない」。県外から入ったボランティアからも「能登の人は遠慮深い」との声を聞くという。チラシを配ってボランティアへの依頼を呼びかけているが、最近は減少傾向だ。