マイナンバーカードと「ポイントカード」の一体化を政府が進める理由
大失敗した「住基カード」
こうした説明の一方で、民間のポイントカードとの一体化は、マイナンバーカードの普及策だという見方も強い。政府は、国民の中でわずか5・5%の普及率にとどまった「住基カード」で失敗した苦い経験を持つ。実際、自民党のIT戦略特命委員会が2014年にまとめたマイナンバー制度に関する緊急提言では「政府に対して、住基カードが普及しなかった反省の上に立った個人番号カードの普及策の実現を強く求める」と記され、「マイナンバー制度の導入、定着、そして発展に向けて、国民の期待は大きく、すでに多額の税金が投入されており、絶対に失敗は許されない」と強調されている。
企業のポイントが統合されるわけではない
マイナンバーカードが民間企業のポイントカードとしても利用できるというのは、どういうことなのか。マイナンバーカードには個人番号が書かれているほか、ICチップが埋め込まれており、電子証明書に利用することができる。このICチップには空き容量があり、この空き容量を民間企業のポイントカードや社員証の機能などに活用してもらおう、というのが政府の考えだ。高市大臣は8日の定例記者会見で「ここにさまざまな可能性があると考えている」と話している。 総務省によると、検討を進めているのは、マイナンバーカードのICチップの中に個人番号とは別の「マイキーID」を作り、各企業や自治体のサービスを呼び出す「マイキー・プラットフォーム」という基盤を作る構想。マイキーIDは個人番号とは切り離されて運用され、それぞれの企業が独立して持つポイントサービスに接続するための「基盤」にすぎないので、企業ごとのポイントを統合するものではないという。同省は、各サービスを呼び出すしくみをカードに内蔵するにすぎず、マイナンバーカードには買い物情報などの個人情報は記録されないし、国がそのような個人情報を集めることもないと説明する。 マイナンバーカードのこの機能を利用するかどうかは各企業が決めることで、実際に民間のポイントカード機能などのサービスが利用できるようになるかは、まだ決まっていない。総務省の担当者は「まず自治体のカードなどから始め、希望があれば民間のポイントカードの運用にも広げていけたら」と話した。